素朴でいじられキャラの芸人、カラテカの矢部太郎さんが綴る大家さんとの日常です。何かと矢部さんに声をかけ、お茶や食事に誘い、世話を焼く大家さん。最初こそ戸惑いはあったものの、矢部さんも大家さんの話に耳を傾け、次第に親密な人間関係を紡いでいく。そんな日々の出来事を、本人がどう贔屓目に言ってもうまいとは言えない絵で漫画にしました。
大家さん、終戦の時に17歳ということは、多分昭和3年生まれ、私の父、義母と同い年です。いいとこのお嬢だったようですけど、でも、その青春は戦争で真っ黒に塗り潰されていたはず。そんな大家さんのマイペースに、自然と寄り添えることができる矢部さん、TVで見たまんまの人ですね。
家は新宿区のはずれの方だそうで。実は私も今、中野区に近い新宿区に住んでいまして、本書に登場するマクドナルドも松屋も駅前にありますし、近くに川も流れていますので、もしかしたら、矢部さんと大家さん、私の家の近くに住んでいたのかもしれません。
大都会のすぐそばの、ちょっぴり時代の流れから取り残されたような場所で、やはり流れから一人取り残された大家さんが、これまた現代の若者らしくない、素朴な人柄の矢部さんと暮らす、そんな日常、ほっこりするふれあい。
大家さん、亡くなられたのですよね。今の矢部さんの気持ちを想いながら読むと、じんわり涙があふれてくるシーンもいくつかありました。
大家さんのご冥福を心よりお祈りします。