夫に不満のある若い妻・園子は、技芸学校で出会った光子と禁断の関係に落ちる。しかし奔放で妖艶な光子は、一方で異性の愛人・綿貫との逢瀬を続ける。光子への狂おしいまでの情欲と独占欲に苦しむ園子は、死を思いつめるが――。
おたがいを虜にしあった二人の女が織りなす、淫靡で濃密な愛憎と悲劇的な結末を、生々しい告白体で綴り、恋愛小説家谷崎の名を不動のものとした傑作。(文庫本の本書の紹介より引用)
かなり昔の話になるが、樋口可南子、高瀬春奈でエロ映画化されて話題になった記憶がある。映画はかなりストーリーが改変されていたようだが、その元ネタの小説ということで、隠微なレズ小説かと思っていた。
でもそれだけではない。光子の恋人の綿貫は実は性交不能者(いわゆるイン○)で、行為そのものにおいては園子を同じ立場?なのにも係わらず、妊娠したとか、妊娠させたとか、誰が真実を語っていて誰が嘘をついているのか、真相はなかなかに藪の中である。
ついには園子の夫も騒動に巻き込まれ、うまいこと綿貫を排斥したかと思ったら、今度は自らが光子との愛欲の泥沼の渦中へ。まさにタイトル通りのくんずほぐれつ。この辺になってやっと真実が、騒動の黒幕が見えてくる。女の業というか、性というか、それが思いもよらない結末を招く。
作品は園子夫人が事件の顛末を谷崎自身?に語る形式、さすがに時代を反映して露骨な描写こそないが、その分ネイティブな口語体の大阪弁が何とも情感があって艶っぽい。関西出身の北川景子さんあたりに声に出して読んでもらいたい一冊。