しばし寒い日本を離れ、ハワイに行っていました。これは行きの飛行機の中で読んだ本。
平安時代の京都、若盛りを過ぎたとはいえ美貌の似非巫女・綾児は、仲間の阿鳥から儲け話を持ち掛けられ
る。40年ほど前に、京から大宰府に左遷されて非業の死を遂げた右大臣、菅原道真の祟りを利用するというのだ。巫女とはいえ本業は娼婦、道真の名前さえ知らない、綾児を憑坐に、布教は始まる。
やがて不遇を囲っていた菅原道真の孫、文時がこれに目をつける。おのれの出世に利用しようとプロデュースを本格的に開始、時の実力者に取り入った北野天満宮は大いに繁盛した。
しかし、やがて、綾児、阿鳥、文時の間で主導権争いが勃発する。。。
上級貴族の専横で崩壊していく律令体制、栄華を極める貴族たちの影で、汚れ仕事を引き受る人々が勃興していく。そんな時代のうねりの中、体制に取り入ることしか思いつかない文時らに比べ、新興階層をターゲットに、彼らのカリスマになろうとした型破りの巫女、綾児の生きざまのいかに痛快なことか。
歴史小説ではあまり描かれない時代であり、しかも怨霊信仰、祭礼のプロデュースという、まずほとんど取り上げられない題材。破天荒な歴史小説で、面白かった。
かの時から1000年近い年月が流れ、今や菅原道真、天満宮は受験の時にお参りする学問の神様。綾児もびっくり!ですよね。怨霊、雷神がいかにして受験の神様になりえたのか、そちらの方にも興味津々です。