「室町無頼」(垣根 涼介) 熱量の高い歴史エンタメ! | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

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室町無頼

 

ならず者の頭目・骨皮道賢は幕府に食い込み、洛中の治安維持を任されていたが、密かに土倉を襲撃する。浮浪の首魁・蓮田兵衛は、土倉で生き残った小僧に兵法者への道を歩ませ、各地で民百姓を糾合した。肝胆相照らし、似通った野望を抱くふたり。その名を歴史に刻む企てが、奔り出していた。動乱の都を駆ける三人の男と京洛一の女。超絶クールな熱き肖像。

(「BOOK」データベースより)

 

室町時代中期、高校の日本史の教科書に、惣村とか土一揆とか記載されていました。 秩序は乱れ、格差は拡大し、世に不満が鬱積した結果、群雄割拠、戦国時代に向けた胎動が始まる価値観の転換期、資料が乏しいからか、傑出した歴史上の人物がいないからか、今までの歴史小説ではあまり取り上げられてこなかった時代です。

 

盗賊出身ながら市中警護役を任された骨皮道賢と、一揆の首魁蓮田兵衛、よほどの歴史好きでなければ知らない実在の二人、骨皮道賢なんてふざけた名乗り、一体どんな人物だったのだろうと想像を掻き立てられます。この二人を主人公としてキャラ設定をし、棒術使いの才蔵と、その3人と関係を持つ遊女・芳王子という架空の人物を搦めて、話は展開していきます。

 
西から攻め上ったせいで、武家政権にもかかわらず寺社や公家といった旧勢力の強い京都に本拠を置いてしまった室町幕府。3代足利義満をピークに弱体化、秩序は乱れ、格差は拡大し、文化はすたれる。世に不満が鬱積した結果、群雄割拠、価値観は転換し、戦国時代に向けた胎動が始まる。

垣根さんとしては、歴史小説は「光秀の定理」に続いて2作目、今回のは作風としては和田竜さんに似ているでしょうか。リアリティあふれる、熱量の高い歴史エンタメ小説に仕上げています。

本作は第156回の直木賞候補作になりました。直木賞は大御所・萩原浩さんに譲りましたが、審査員の先生方の選評を読む限りではほぼ次点扱い。最初は「垣根さんが歴史小説?」という気もしたのですが、そんなことない。次作も期待しています。