「八月の六日間」(北村薫) 山が呼んでいる | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

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廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

八月の六日間

 

雑誌の副編集長をしている「わたし」。柄に合わない上司と部下の調整役、パートナーや友人との別れ…日々の出来事に心を擦り減らしていた時、山の魅力に出会った。四季折々の美しさ、恐ろしさ、人との一期一会。一人で黙々と足を動かす時間。

山登りは、わたしの心を開いてくれる。そんなある日、わたしは思いがけない知らせを耳にして…。

日常の困難と向き合う勇気をくれる、山と「わたし」の特別な数日間。

(「BOOK」データベースより)

 

「あれ、北村薫って女性だったっけ?」と思うくらい自然な、山ガールのモノローグ。

日常から非日常へ、仕事をやりくりして休みを取っては、せっせと一人山に登る。最初に予想したのよりもずっと山寄りの小説。話に登場する山々も槍ヶ岳をはじめ、なかなかに本格的。

 

でも、決して日常で嫌なことがあって非日常に逃避しているというわけではない。私も一時トレイルランニングにはまってた時期があるので、山が呼んでいるとしか言いようのない、あの気持ちは良くわかる。

トレランも、走力の違う人と行ってもお互いペースが作れないので、この小説の「わたし」同様、一人で行くことが多かった。友人と行っても、結局バラバラになってゴールで集合になる。

トレランは、基本的には走るので、北アルプスみたいな本格的な山は無理。また、距離も20km以上になるので、高尾・陣馬往復とか、三頭山などの奥多摩の山々や箱根の外輪山を縦走ということになる。

3000m級は富士山と、今は、あの噴火で登れなくなった木曾御嶽山に行った。両方とも単独峰なので登って降りるだけ。2500mを超えると空気が薄くなるので、走るのはかなり厳しい、、、なんて、思い出していると、また山に行きたくなってしまう。

 

ところで、北村さん、この本を、実際に山に登らずに書いたらしい。よく書けたな。一人道に迷うシーンなど、なかなかにリアルだった。