盆市で大工が拾った迷子の男の子。迷子札を頼りに家を訪ねると、父親は火事ですでに亡く、そこにいた子は母と共に行方知れずだが、迷子の子とは違うという…(「まひごのしるべ」)。
不器量で大女のお信が、評判の美男子に見そめられた。その理由とは、あら恐ろしや…(「器量のぞみ」)。
下町の人情と怪異を四季折々にたどる12編。切なく、心暖まる、ミヤベ・ワールドの新境地!
(「BOOK」データベースより)
江戸の市井の人を題材にした短編が12編、一見怪奇譚なのだけど、「鬼子母火」「だるま猫」「小袖の手」、本当の怪奇譚もあれば、怪奇譚に見せかけたミステリー、人情話も寓話っぽいのもあり、短いながらもそれぞれが多彩。
第6話「まひごのしるべ」は、迷子札をつけた子どもを題材にした、母性溢れるミステリー。
第10話の「神無月」は娘の病のために意に沿わぬ盗みを働く職人の父と、事件の謎に気づき、犯人を追う岡っ引きの哀愁漂うサスペンス。
話の並びも中々に考えられていて、最後の「紙吹雪」は母子を心中に追い込んだ金貸しに対する凄惨な娘の復讐劇でクライマックス。
一番好きな話は、第9話の「首吊り御本尊」、もしこれがご隠居の作り話だったというのであれば、かなりひねりが効いている。
宮部さんの本は結構読んでいるけど、時代物は初めて。これはこれで、なかなかでした。