住野さんの作品は、ベストセラーとなったデビュー作の『君の膵臓をたべたい』、2作目の『また、同じ夢を見ていた』、そして最新作の『か「」く「」し「」ご「」と「」』に続いて4作目。
要するに、全部読んでるってことになります。
本作のテーマは「いじめ」です。正確に言うと、いじめを見て見ぬふりをする中学3年生の「私」こと安達くんの心の葛藤。
ターゲットになっているのは矢野さつきという、話し方のとろい、空気が読めないクラスメートの少女、安達くんのクラスは、彼女をハブにすることで結束しています。
ところで、安達くんは、なぜか夜になると八つの眼玉、六本足の獣の化け物に変身し、街を徘徊します。
ある夜、学校に忘れ物を取りに行った化け物の安達くんは、学校に忍び込んで「夜休み」をしていた矢野さんにばったり会ってしまいます。あっさり、化け物の正体が安達くんだと見抜いた矢野さん、そして矢野さんと安達くんの夜中の交流が始まります。
昼はクラスの方針に従って矢野さんのいじめに加担し、夜はそれなりに矢野さんと話をする安達くん。安達くんは、クラスからハブにされないために、安達さんのいじめに賛同する姿勢を取っているのです。
姿は化け物でも心は正しい夜の安達くんと、それと真逆の昼の安達くん。
さて、どうして矢野さんはクラス中からハブにされているのでしょうか。
ここからは私の想像になりますが、黒幕は安達くんの親友でクラスのリーダーの笠井くん。矢野さんが友達の緑川さんとけんかをして、緑川さんが読んでいた本を窓から放り投げ、彼女を泣かせてしまった。この緑川さんのことを笠井くんが憎からず思っていたようで、ここから矢野さんに対するいじめが始まります。
といって、笠井くんは決して表に出ない。陰からクラスメートに影響力を発揮して、そういう雰囲気を作ってしまう。
緑川さんは、自分のせいで矢野さんがいじめにあっているのをすごく気にしているのだけど、表面的には無関心を装い、陰で矢野さんをいじめた人に復讐をしています。
井口さんは、矢野さんの落とした消しゴムを拾っただけでハブにされそうになるのだけど、矢野さんが井口さんをビンタするという、矢野さんの「泣いた赤鬼」的な機転で難を逃れます。
そんなことも、矢野さんはすべてお見通しなのです。
ついに、安達くんは矢野さんに聞かれます。「昼と夜、どっちが本当のあっちーくん?」
翌日、安達くんの取った行動、そしてその後の顛末もちょっとしんどいのですが、一行だけの最後のページ、なかなかにグッときます。
この本、中学生の時に読みたかったな。そして、今の中学生に、ぜひ読んでほしいと思います。