ジャクソン・ポロック幻の傑作「ナンバー・ゼロ」のオークション開催が迫る香港。建築家である真矢美里は七人の仲間とともにオークション会場へ潜入していた。
一方、アーティストを夢見る高校生・張英才に“アノニム”と名乗る謎の窃盗団からメッセージが届く。「本物のポロック、見てみたくないか?」という言葉に誘われ、英才はある取引に応じるが…!?
ポロックと英才、ふたつの才能の出会いが“世界を変える”一枚の絵を生み出した。痛快華麗なアート・エンタテインメント開幕!!
(「BOOK」データベースより)
実は、私、昔、香港に4年ほど住んでいたことがありまして、大好きな原田マハさんのアートを題材にした小説、しかも舞台は第二の故郷・香港ときては、これは読まずにはいられないと手に取ったのですが、うーん、いつもの原田さんとはちょっと違う。
何ともセレブな盗賊団、しかも盗まれた作品を盗み返すという義賊。設定が何とも現実離れしていて、漫画っぽいといか、ルパン三世っぽい?
不勉強にしてポロックのことは全然知らなかったのですが、第二のポロック、高校生の張英才を登場させるあたりが原田さんのアート愛なんでしょうけど。
「一国二制度」、高度な自治を約束しておきながら普通選挙に横槍を入れる中国に対し、学生が立ち上がった、実際に14年に起きた香港の学生たちの運動、雨傘革命をテーマのひとつにしているのですが、それをアートを結びつけるのには、ちょっと違和感を感じてしまいました。
それと、結末も、ははーん、これは「暗幕のゲルニカ」と同じパターンだなと、序盤でなんとなく想像がついてしまいました、
「楽園のカンヴァス」「ジヴェルニーの食卓」「暗幕のゲルニカ」などなど、一連の原田さんのアート作品とは全然違う、でも、軽めのエンタメ作品なんだと思って読めば、これはこれで結構楽しめます。