「私は、“永遠”という響きにめっぽう弱い子供だった。」誕生日会をめぐる小さな事件。黒魔女のように恐ろしい担任との闘い。ぐれかかった中学時代。バイト料で買った苺のケーキ。こてんぱんにくだけちった高校での初恋…。
どこにでもいる普通の少女、紀子。小学三年から高校三年までの九年間を、七十年代、八十年代のエッセンスをちりばめて描いたベストセラー。
(「BOOK」データベースより)
なんとなくBOOK OFFで購入して、そのまま積読本になっていたのだが、17年の集英社文庫のフェア「ナツイチ」に入っていたので、何とはなしに読んでみた。
第一回本屋大賞第四位作品、ってことは04年、結構前の本になる。
ヒロインはどこにでもいる普通の少女、紀子。著者の森絵都さんと同い年、1968年生まれとすると、30代半ばになって自分の少女時代を回想して書いた、という設定になる。たのきんトリオとか、山下達郎とか、ユーミンとか、時代を表すネタがちりばめられていて、なかなかに楽しい。
普通の少女というけれど、彼女の子供時代は、小説になるくらいに決して平凡ではない。特に中学校時代の件は、千葉県民の方には大変失礼ながら、何となくグレ方が千葉っぽいなと思ってしまった。普通の子でも、自分にしてみれば人生はそれなりに波乱万丈なんだなと、この本を読みながら、平凡な少年だった自分の子供時代を思った。
小学校低学年の頃は、給食が食べられなくて、それを先生が許してくれなくて、大変だったとか、高学年の頃はいじめられっ子体質だったなとか。部活でバレーばかりやっていた高校時代、でもファーストキスとかあったから、それなりに青春もしてたかな。
自分に森さんほどの文才があれば、かなり面白いものが書けたかもしれない。残念。
この歳になって、中学、高校と昔の友達と会う機会が増えた。昔話をすると、みな少しずつ自分勝手に過去を美化していて、話が微妙に食い違うことが多い。でも少しだけ自分をヒーローにして、それが前を向いて今を生きる活力になっているなら、それはそれでいい。