母と二人で大切にしてきた幼い妹が、ある日突然、大人びた言動を取り始める。それには、信じられないような理由があった…(表題作)。
昭和30~40年代の大阪の下町を舞台に、当時子どもだった主人公が体験した不思議な出来事を、ノスタルジックな空気感で情感豊かに描いた全6篇。直木賞受賞の傑作短篇集。
(「BOOK」データベースより)
「トカピの夜」「妖精生物」「摩訶不思議」「花まんま」「送りん婆」「凍蝶」の短編6作。それぞれに趣の違いはあるけど、どれもが甲乙つけがたく素晴らしい。一番最初の「トカピの夜」で「おっ、これは!」と思わされて、そのまま最後まで一気読みだった。
在日朝鮮人差別と幽霊を絡めた「トカピの夜」、官能的な「妖精生物」、ユーモラスな「摩訶不思議」、前世の記憶と兄弟愛を描いた「花まんま」、現代の医療とは対極の庶民に根付いた安楽死を扱う「送りん婆」、同和問題に正面から向き合った「凍蝶」。
いずれも昭和40年代の大阪の下町が舞台。子供時代の話だからで記憶があいまいになっているのか、それともあの時代はまだ不可思議なことがあったのか。最後の「凍蝶」を除いて、ホラーではないけど、ちょっと背筋がゾワッとする不思議な話。
ノスタルジックな雰囲気を漂わせながらも、ズバッと本質に斬りこんでくる、納得の第133回直木賞受賞作。
これで、131回から155回までの受賞作、計30冊を読んだことになる。
直木賞に外れなし!とまではいわないけど、やはり面白い作品が多い。
もう少し、遡ってみようかな。
