9年前、家族を事故で失った環は、大学を中退し孤独な日々を送っていた。ある日、仲良くなった紺野さんからもらった自転車に導かれ、異世界に紛れ込んでしまう。そこには亡くなったはずの一家が暮らしていた。
やがて事情により自転車を手放すことになった環は、家族に会いたい一心で“あちらの世界”までの道のりを自らの足で走り抜く決意をするが…。
哀しみを乗り越え懸命に生きる姿を丁寧に描いた、感涙の青春ストーリー。
(「BOOK」データベースより)
長いこと積読本にしていたが、マラソン会場への道すがら、電車の中で読む本として、タイトルで選んだ。でも、読み始めると、思ったのと全然違う内容!最初は環のあまりの消極さ、ネガティブさ、煮えきらなさ、コミュニケーションスキルのなさに、イライラもした。
ありえない理由で走り始めることになった環だが、走る理由は人それぞれ、ハタくんのダイエットはもちろん、藤見さんの退職してヒマになったからという人も結構いる。環のように具体的な理由を持った人ばかりではないが、それで良い。
大切なことは、走る仲間が、その走る目的の多様性を認めること。もちろん、速くなりたい、記録を出したいというチームも、それはそれであり。でも、「イージー・ランナーズ」のような緩いチームはそうはいかない。自分とは違う目的を持った人に対しても、それを受け入れ、応援することができれば、それでよい。互いの夢や目標を応援し、達成したときに祝福しあえる仲間は貴重である。紆余曲折を経ながらも、チームとしてまとまっていく「イージー・ランナーズ」のあり様が微笑ましい。
私も、「昨日までの自分に勝ちたい」というアスリートっぽい理由で走りはじめ、当初は自己ベスト更新に強い意欲を持っていたが、今は友と飲む走った後のビールが一番の走る理由かも。
この本を読みつつ、無事、節目となるフルマラソン40回目の完走を果たすことができた。