「おやすみ人面瘡」(白井智之) | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

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廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

おやすみ人面瘡

 

全身に“脳瘤”と呼ばれる“顔”が発症する奇病“人瘤病”が蔓延した日本。人瘤病患者は「間引かれる人」を意味する「人間」という蔑称で呼ばれ、その処遇は日本全土で大きな問題となっていた。

そんな中、かつて人瘤病の感染爆発が起きた海晴市で、殺人事件が起きる。墓地の管理施設で人瘤病患者の顔が潰され、地下室では少女が全身を殴打され殺されていたのだ。容疑者は4人の中学生。さらに、事件の真相を見抜いた男は、逆上した容疑者のひとりに突き飛ばされ、机の角で頭を打って死亡してしまった…かと思いきや、死んだはずの男の身体に発症した、いくつもの“顔”が喋り始め―。

同じ手がかりから組み上げられる幾通りもの推理の先に、予想を超える真相が待つ。唯一無二の本格推理。

(「BOOK」データベースより)

 

今年の「このミス」8位、「本格ミステリ・ベスト10」の5位に入った作品である。

昨年、私は、この白井智之さんの前著である「東京結合人間」を、途中で気分が悪くなって最後まで読めなかった。

本作も、かなりエグい作品ではあったが、今年はなんとか最後まで読み切ることができた。

 

実際にはありえない、奇病“人瘤病”の蔓延した日本。まず、この人瘤病の設定が細かい。大きな要素は次の3つ。

・ 良性と悪性の二種類があって、良性であれば人格は失わないが、悪性であれば人格は破壊される。

・ 死んでも人面瘡が活動を継続、感染者は脳死状態にはならない。患者が自分以外の咳の音を聞くと、暴走して手が付けられなくなる。

そして登場人物は、こともあろうに人瘤病患者をホステスにした仙台市の風俗店の従業員、カブ、ジンタ、ポッポと、宮城県の地方都市にある中学に通うサラ、クニオ、ミサオ、ウシオ。

冒頭ではなんの関わり合いもないこの2組が、最後は絶妙に絡み合っていく。

 

でも、じっくり推理をしながら読むと胸が悪くなってしまうので、あまり深く考えずにさっさと読み切ってしまった。

そうしたのがちょっともったいないような、本格ミステリではある。