「○○○○○○○○殺人事件」(早坂吝) | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

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廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

○○○○殺人事件

アウトドアが趣味の公務員・沖らは、フリーライター・成瀬のブログで知り合い、仮面の男・黒沼が所有する孤島で毎年オフ会を行っていた。沖は、今年こそ大学院生・渚と両想いになりたいと思っていたが、成瀬が若い恋人を勝手に連れてくるなど波乱の予感。

孤島に着いた翌朝、参加者の二人が失踪、続いて殺人事件が! さらには意図不明の密室が連続し…。果たして犯人は? そしてこの作品のタイトルとは?

(「BOOK」データベースより)

 

著者の早坂吝(はやかわ やぶさか)さんは88年生まれ、若い!

通常の推理小説の主題である犯人捜しをさておいて、「〇○○○○○○○」に入るこの本のタイトルを当てろときた。「究極のエンターテインメント」「面白ければ何でもあり」の第50回メフィスト賞受賞作品であるだけのことはある。

 

それでいて、15年の「本格ミステリ」第6位にランクインしている。本格ミステリの定義を「(ありえない舞台設定であるとかは度外視して)提示された謎を、探偵役が論理的、合理的に解明することだけを追求した物語」とすれば、なるほどこれは本格ミステリなのだろう。

 

推理小説には叙述トリックというテクニックがある。話し方や名前で性別や年齢を誤認させたり、章ごとで時系列を変えたりするものが一般的だが、なるほど、この小説のオチも叙述トリックと言って良いのではないか。後半の話のひっくり返り方は何とも痛快である。

 

一方で「バカミス」ということばがある。馬鹿馬鹿しいミステリーの略であるが、この場合のバカを褒めことばとすれば、この小説は超一級のバカミスであろう。

 

この小説の書評のために作られたのかもしれないが、エロミスということばも聞くようになった。この小説のホームズ役は上木らいち、高校生にして援交をしている。いや、職業意識を持ってやっているようなので、娼婦と言った方が良いのかもしれない。

特技を生かした体当たりの謎解きである。その記述は直球で、艶めかしいというよりも生々しい。

 

好き嫌いが分かれる作品であろう。ちなみに私は好きである。

上木らいちシリーズは現在3作まで出ている。残りの2冊も読むつもりである。