「センセイ、僕たちを助けてください」ある小説家のもとに、手紙が届いた。送り主である中学二年のタケシと、小学五年の男子リュウに女子のジュン。学校や家で居場所をなくした三人を、「物語」の中に隠してほしい。その不思議な願いに応えて彼らのお話を綴り始めたセンセイだったが―。
想像力の奇跡を信じ、哀しみの先にある光を探す、驚きと感涙の長編。毎日出版文化賞受賞。
(「BOOK」データベースより)
家や学校で居場所がなくなってしまったタケシ、リュウ、ジュンの3人の話を、タケシから手紙をもらったセンセイが小説にする。ところが、その手紙に、センセイの過去の作品の登場人物が出始める。どこまでがリアルなのかよくわからない状況で話は進み、やがて3人には死亡フラグが立ちはじめる。なんとなく結末が見え始め、こうなると読み進めるのが辛い。
タケシの好きなものは化石。生物は絶滅しても化石を残す。陸に居場所のなくなったクジラの祖先はテーチス海に居場所を見つけたけど、ステラー大海牛はそのやさしさゆえにあっという間に滅んでしまう。タケシがぽつりぽつりと語る生物の話は、なんとも悲しい。
ということで、これが16年の「新潮文庫の100冊」(といっても、実際は109冊あった)の最後の1冊でした。
SNSのコミュがきっかけで始めた「新潮文庫の100冊」読破も、今年で4年目。好きな本を読むのではなく、この本を読むと決められて読むと、思わぬ本との出会いがあります。おかげで読書の幅は確実に広がりました。もちろん意に沿わぬ本を我慢して読まねばならないこともあるけど、新潮社の選本は、某他社に比べれば、あまり商業主義に走ってなくて良心的。
マラソンを完走したときのような達成感も味わえて、一石二鳥です。