偶然、僕が病院で拾った1冊の文庫本。タイトルは「共病文庫」。
それはクラスメイトである山内桜良が綴っていた、秘密の日記帳だった。
そこには、彼女の余命が膵臓の病気により、もういくばくもないと書かれていて――。
病を患う彼女にさえ、平等につきつけられる残酷な現実。
【名前のない僕】と【日常のない彼女】が紡ぐ、終わりから始まる物語。
全ての予想を裏切る結末まで、一気読み必至!
今年の本屋大賞第二位。評判の本だったので、「そう簡単に感動させられてたまるか!」と気負って読み始めたのですが、うーん、不覚にもそれなりに感動させられてしまった。
奇をてらったようなタイトル、ラノベ風の扉絵、最初から立っている死亡フラグ、お涙頂戴のベタな恋愛ものと思ったら、決してそう単純な話でもなかった。
不治の病に侵されながらもステレオタイプに明るい彼女の、思い出作りに半ば強制的に付き合わされる、クラスでも地味で目立たない僕、でも、知らず知らずのうちに彼女はぐいぐいと地味な僕の心に入り込んでくる、のかなと思ったけどそうでもない。もってまわった二人の会話がやや鼻について、前半はやや退屈かなと思いながら読んでいたのだが、いつの間にかやめられない、止まらないとなって、あとは一気読みでした。
でも何かに似ているなーと思いながら読んでいたのですが、「四月は君の嘘」か。
月並みな展開を予想しましたが、最後は思っていたのとちょっと違った。
多少の波風を立てながらも彼女の思惑通り進んでいた終活がある日突然終わりを告げる。
完結はされなかったけど通じていた二人の想い、彼女のために変わろうと思った名無しの僕は、しっかりと自分の名前を取り戻す。
エンディングは1年後のお墓参り、意外な同伴者に読後感は爽やかでした。