かけがえのない、高校生だった日々を共に過ごした四人の男女。テストにやきもきしたり、文化祭に全力投球したり、ほのかな恋心を抱いたり―。
卒業してからも、ときにすれ違い、行き違い、手さぐりで距離をはかりながら、お互いのことをずっと気にかけていた。卒業から20年のあいだに交わされた、あるいは出されることのなかった手紙、葉書、FAX、メモetc.で全編を綴る。
ごく普通の人々が生きる、それぞれの切実な青春が、行間から見事に浮かび上がる―。姫野文学の隠れた名作。 (「BOOK」データベースより)
(感想)
「カドフェス2016」今年の1作目は姫野カオルコさんの「終業式」。
書簡体の小説は曲者である。なぜって、どの書簡が本音でどれが嘘か、考えながら読まねばならないから。そういう意味では、途中で廃棄されたり、結局出されなかった手紙が本音なのだろう。
主な登場人物は高校同期の4人、妹気質の普通の女子高生・八木悦子、その親友で優等生の遠藤優子、これまた普通の高校生の都築宏、その悪友でお調子者、猪突猛進型の島木紳助。
自分と同世代の物語で、谷村新司とバンバンの「セイ!ヤング」とか、小説に登場する小道具とか、ちょっとした言い回しが非常に懐かしい。
大体こんな高校生活を送っていた。自分が脇役で手紙に出てきても全然違和感がない、とてとてもリアリティのある小説だ。
ヒロインの悦子はとにかくウザいの一言。かわい子ぶって、計算高くて、依存体質で、他人の気持ちがわからなくて、、、時々はたいてやりたくなった、とまで言うと、男目線に過ぎるだろうか。
都築にも、本質的にはまじめなんだろうけど、それだけに恋愛に関しては成り行き任せ。そういえば自分の同期にもトルコ嬢(今は死語だが)と真剣にお付き合いしてるやつがいたななどと思い出してしまう。
この二人を軸に話は進んでいくのだが、二人ともまじめで、悩んでいるようでいて、結構行き当たりばったりで、しっかりいい思いもしているというか。その点優子さんは割を喰ってしまっている。それがああいう形で爆発したわけか。
未熟者の二人も、それぞれに失敗を経験し、それなりに成長し、落ち着くところへ落ち着く。ああ、それでタイトルが終業式になったわけか。
しばらくしたらまた読み返してみたくなる、姫野カオルコさんの傑作であると思う。