(あらすじ)
元AV女優の母親を憎む少女。家族に内緒で活動を続ける人気AV女優。男に誘われ上京したススキノの女。夫が所持するAVを見て応募した妻。四人の女優を巡る連作短編小説。
(感想)
この本を手に取った理由、それは著者がタレント、というか、現役AV女優だったから。
今日び、芥川賞の又吉直樹さんは言うに及ばず、「ピンクとグレー」が映画になった加藤シゲアキさん、「永遠とは違う一日」が山本周五郎賞候補になった押切もえさん、小説の世界でもタレントさんが異彩を放っている。
とはいえ、いくらなんでもこれは、著者はバリバリ現役のAV女優で、しかも若干23歳。童顔、というか、ロリ系ですかね。
「彩乃」「桃子」「美穂」「あやこ」、女性の名前の短編が4編。最初の「彩乃」を読んで、ああこれはやっぱり楽屋落ち小説かと、そう思った。
「彩乃」は20歳、肉体関係を持った人がAVのスカウトだった。撮影現場でシャワーを浴びてメイク室に戻ると携帯に母親から電話がある。
あとはお約束の母娘の葛藤劇、実話かななんて思って読んだ。
でも、他の3作は、若干AV絡みではあるが、普通に小説。
「桃子」は決して美人ではない、柴犬のようにふさふさの太い眉毛の持ち主。AVデビューと同時に始まるプロダクションの社長・石村との共同生活。石村への愛ゆえに女優を続ける桃子が突然に別れを告げたその理由は?
「美穂」は寝室を別にしている夫の部屋で、自分とよく似た肉付きの良い女性のAVを発見してしまう。彼女の体で何かが暴れだし、美穂は女優の所属先のプロダクションに電話をして女優を志願する。
「あやこ」は祖母との母と金沢で暮らす中学生。学校では影の薄い存在だった彼女が絵のコンクールに入賞すると、あやこはAV女優だった母と男優の間に撮影中にできてしまった娘だといううわさが流れる。
あらすじを書くとそれぞれに異常な話かと思わせるが、読んでみると意外にそういう感じはしない。唯川恵さんの小説っぽい感じがしないでもない。まだ粗削りで軽いけど、センスは感じる。文章も自然で読みやすい。
世の中、先入観をもってはいけない、あなどってはいけないということか。
まだまだ23歳。次作でもう少し普通っぽいものが書ければあるいは、と思わせる才能ではある。

