「しゃべれども、しゃべれども」(佐藤多佳子) | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

しゃべれども、

(あらすじ・内容)

まだ二つ目の噺家、今昔亭三つ葉は頑固でめっぽう気が短い。女の気持ちにゃとんと疎い。

「しゃべりのプロだろ、教えてよ」、あがり症の従弟や口下手の美女から頼られて、話し方教室を開くハメになった。苛めにあった小学生や赤面症の野球解説者までが通ってくるようになった。口下手で正直な人たちの胸キュン小説。

 

(感想)

口下手、コミュニケーション能力の欠如、というよりも、性格的にとことん不器用な人が三つ葉の周りに集まってしまった。

あがり症で吃音のため、テニスコーチができなくなってしまった良、過去のトラウマから不愛想を貫く五月、クラスのボスに迎合することができずに孤立する優、口下手ゆえに干されてしまった野球解説者、湯河原。

ホントに、とにかくもどかしい連中で、とにかく他人に対して心を開けない。見た目はけっこう嫌な奴だったりします。素直になれない、だから分かり合えない。

こんな彼らに落語「まんじゅうこわい」を教え始めた三つ葉、しかし四人四様になかなか上達しない。そもそもが先生役の三つ葉自体が、落語は半人前でなかなか上達しなくて、好きな女性の前ではうまく話ができなくて、失恋して、、かなり不器用な男です。

それが、少しずつ、本当に少しずつ、三つ葉を触媒に変わり始める。仲間になり始める。

 

最後の三つ葉と五月、良かったですね。こんなにキュンとする恋愛、久々に読みました。

文句なしに傑作です。

 

本屋大賞受賞作の「一瞬の風になれ」の時も思ったけど、この人の文章って、本当に読みやすい。自然に、すっと入ってくる。

佐藤さんの小説、もう少し読んでみようかな。