「新しい十五匹のネズミのフライージョン・H・ワトソンの冒険」(島田荘司) | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

(内容)
「赤毛組合」の犯人一味が脱獄した! ワトソン博士のもとに、驚天動地の知らせが舞い込んだ。だが肝心のホームズは重度のコカイン中毒で幻覚を見る状態。
犯人たちの仰天の大計画とは。その陰で囁かれた謎の言葉「新しい十五匹のネズミのフライ」とは。そして「赤毛組合」事件の書かれざる真相とは。果たして、われらがホームズが復活する時は来るのか。
さまざまなホームズ作品のエッセンスを、英国流のユーモアあふれる冒険譚に昇華させた大作。
(「BOOK」データベースより)
(感想)
コナン・ドイルのシャーロック・ホームズ・シリーズの熱狂的なファンを「シャーロキアン」と言うのだそうですが、さしずめこの作品の著者の島田荘司さんは、筋金入りのシャーロキアンなのでしょうね。
なにしろ、「シャーロック・ホームズの冒険」の「赤毛組合」の続きを、勝手に書いてしまうのですから。
あの「赤毛組合」の真の犯人は、あのトンネルを掘った連中ではなくて、黒幕が別にいる。黒幕は、ホームズの推理パターンを読んでいて、その裏をかいた。ところが、肝心のホームズはコカイン中毒になって大暴れの末入院してしまい、全く役に立たない。
そこで、脇役で語り部役のワトソンくんが、一躍主人公になって八面六臂の大活躍をする、そんなお話です。
アクションあり、ロマンスあり、私は、ホームズ・シリーズの面白さはやはり短編にあると思っているのですが、この作品はなにしろ盛りだくさんで、長さを感じませんでした。
この作品、シャーロック・ホームズを読んでいなくとも楽しめるとは思いますが、でも、やっぱり読んでいるに越したことはない。
かく言う私も、「緋色の研究」「シャーロック・ホームズの冒険」の初期の作品2冊しか読んでいないのですが、「シャーロック・ホームズの冒険」の中の短編、「赤毛組合」が下敷きになってるので、読んでおいてよかった。
シャーロキアンの島田さんのことですから、私の気づかなかったことも多々あるのでしょう。もう少しホームズ・シリーズを読んでから再読してみたい、そんな作品でした。

