(あらすじ・内容)
ジヴェルニーに移り住み、青空の下で庭の風景を描き続けたクロード・モネ。その傍には義理の娘、ブランシュがいた。身を持ち崩したパトロン一家を引き取り、制作を続けた彼の目には何が映っていたのか。(「ジヴェルニーの食卓」)
新しい美を求め、時代を切り拓いた芸術家の人生が色鮮やかに蘇る。マティス、ピカソ、ドガ、セザンヌら印象派たちの、葛藤と作品への真摯な姿を描いた四つの物語。
(感想)
原田マハさんお得意の美術を題材にした作品ということで、「楽園のカンヴァス」っぽいものを想像していたのですが、全然違いました。
マティス、ドガ、セザンヌ、モネ、19世紀から20世紀にかけて、芸術の都・パリを舞台にした印象派の巨匠たちの物語でした。美術に造詣の深い、原田さんの芸術に対する尊敬と愛情にあふれた、彼女ならではの作品です。
「うつくしい墓」は、色彩豊かなモティーフを描き続けた晩年のマティスを、彼のそばに仕えた女性が遠い若き日の思い出として懐古します。マティスとピカソ、ライバルでありかけがえのない友人であった二人の天才画家の交流が良いです。
「エトワール」は、新しい美を求め、無名の踊り子に注ぐドガの情熱が、彼に秘めた思いを持ち続けた画家の視点で語られます。
「タンギー爺さん」は、セザンヌやゴッホら若い画家の才能を信じ、支え続けた画商の人生を。
そして表題作の「ジヴェルニーの食卓」は、没落してしまったパトロンの妻子と新たに家族を築くモネのために妻と娘が用意し続けた愛情あふれる食卓や、美しい庭からあの連作「睡蓮」が生まれる様を、モネを尊敬し続けた義理の娘が語ります。
昨年、上野の都美術館で開催された「モネ展」を見てきました。モネは晩年眼を患っていたようですが、なるほど彼の眼には、ジヴェルニーの庭があのように見えていたのかな。