今年読んだ本、全256冊から、無理やりベスト10を選んでみました。
んー、なんか、ミステリーが多くなっちゃったなー。
1位:「何者」(朝井リョウ)
12年下期の直木賞受賞作、待望の文庫本化です。
拓人、光太郎、瑞月、里香、隆良の、就活という人生の節目のイベントを通じて明らかになる残酷な人間模様。
本音を言える人、自分を大きく見せようとかっこをつける人、匿名でないと本音を言えない人。でも、どう自分を繕ったところで、友人も、会社も真実を見ている。所詮、人生、地に足をつけて努力し続ける人が成功するのです。 拓人くん、分かったみたい。
2位:「星を継ぐもの」(ホーガン)
一応ハントさんが主人公なんだろうけど、ハントさんのキャラ設定とかプライベートな出来事とか、そういうのは一切なく、ただただ月で発見された5万年前の人類の死体から、後半一気に話が展開していく、一切遊びのないハードコアなSF。スケールも壮大。後半は一気読み、謎解きも衝撃でした。
これが40年近くも前に書かれたものとは!
3位:「サラの柔らかな香車」(橋本長道)
話はちょっと荒っぽいけど、勢いがあって面白かった。
スポーツでも、素質、才能、この人ってアスリートの神様に愛されてんだなーって思える人、いますよね。
サラ、塔子、七海、三人三様の将棋の才能。
その才能の何たるかを知り、崇めたたえる元棋士の著者の筆致が何ともノリノリで楽しい。
そういえば、将棋、もう20年くらいやってないかも。
4位:「64(ロクヨン)」(上・下)(横山秀夫)
14年の「このミステリーがすごい」1位、待望の文庫本化。
D県警の汚辱ともいえる時効直前の誘拐殺人事件64(ロクヨン)をめぐる警務部と刑事部の対立、そんな中で模倣事件が起きる。
警察の存在目的は市民の生命、財産、安を守ること、でも組織が肥大化すれば、組織は自らの維持、拡大を優先し、そのための隠ぺいや抗争が起きる。それを打開するのは現場の人、一人一人の意識、使命感、行動。緻密なミステリーと組織の中の人の在り方と、仕事への使命感を両立させて描いた佳作と思います。
5位:「この女アレックス」(ルメートル)
今年のミステリーの海外部門の各賞総なめの小説ということで読んでみたが、なるほど、むべなるかな。
アレックスの印象が、一章、二章、三章と章が進むごとに全く変わってしまう、よくできた小説。
逆境でもあきらめない強い女、無差別で衝動的なシリアルキラー、そして、、、結末は壮絶ですね。
カミーユをはじめ警察側の3人もキャラ立ちしてて良いです。真実よりも正義、か。
6位:「満願」(米澤穂信)
昨年の山本周五郎賞受賞作、今年も「このミス」をはじめ、ミステリー三冠を獲得し、直木賞候補ににもなった米澤さんの話題作。
登場人物も趣も違う短編ミステリーが6篇。最初の「夜警」でいきなり米澤さんの世界に引きずり込まれました。
「柘榴」は少女でも女の性を持っているってことか、「万灯」は昔の商社マンの話、「関守」「満願」と、最後までドキドキしながら読みました。
ほの暗い心の闇、それで結論はどうなっちゃうのと余韻を残して終わる珠玉の短編集でした。
7位:「吉原手引草」(松井今朝子)
07年の直木賞受賞作。 吉原を描いた本は宮木さんの「花宵道中」に続いて2作目だけど、こちらはヒロインの花魁・葛城が登場しないまま、彼女を取り巻く人のインタビューで話が展開していく。葛城が何をやらかしたのか分からないまま、色恋沙汰を匂わせながらのミステリー仕立て。
序盤はさながら吉原のガイドブックのよう。単なる色街ではない、非日常を演出する疑似恋愛の場、華やかさの裏にある女性の苦界、どうしようもない閉鎖社会を舞台に次第に解き明かされていく真実、文句なしに面白かった。
8位:「ジヴェルニーの食卓」(原田マハ)
題名から「楽園のカンヴァス」的なお話かなと思ったのですが、違いました。
マティス、ドガ、セザンヌ、モネ、のちに巨匠と呼ばれる画家たちの葛藤。彼らに魅入られ、生涯をかけて応援した女性たちから見た巨匠を描いた短編4編。
絵画に対する造詣の浅い私ですが、ググって作品を確認しながら読みました。期待したものとは違いましたが、やはり原田さんは外さない。
都美術館で「モネ展」を見たら、無性にこの本が読みたくなって、本棚から引っ張り出して再読しました。
9位:「ジェノサイド」(高野和明)
面白かった―、単にスケールの大きなミステリーではない。研人と李さんの奮闘に、人類の未来を見る思いでした。この二人って、大久保で線路に落ちた人を助けようとして命を落とした二人がモデル?
自分は現生人類の未来というものを信じたいです。それにしてもよくできた小説でした。時間を忘れて、一日で一気読みしてしまいました。後半、多少
荒唐無稽と思うところはありましたが、総合的に佳作と思います。
10位:「本屋さんのダイアナ」(柚月麻子)
早稲田大学の例のサークルの事件?を下敷きにした彩子の成長物語と、父と会うという幼いころからの夢に破れてしまったダイアナの物語、小学生のころの親友の人生が運命的に交差する。
はらはらしながらも、地味に勇気づけられる、また読み返したい作品です。