傷物語(西尾維新) | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

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廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

傷物語


(あらすじ・内容)
高校生・阿良々木暦は、ある日、血が凍るほど美しい金髪の吸血鬼と出遭ってしまった!
彼女がいなければ、“化物”を知ることはなかった。「化物語」(バケモノガタリ)』の前日譚。

(感想)
「化物語」に続くシリーズ第二弾、といっても、内容は「化物語」の前日譚、すなわち主人公の阿良々木暦くんが戦場ヶ原ひたぎや神原駿河や八九寺真宵や千石撫子と出会い、ハーレムを構成する前の話。怪異中の怪異、鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードに出会い、吸血鬼に出会い、吸血鬼となり、そして人間に戻る、3年の春休みのお話です。

化物語シリーズの面白さって、やはり会話の面白さで、それは会話の相手の戦場ヶ原ひたぎ、八九寺真宵、神原駿河のキャラ、絶妙のボケとツッコミによるところが大きい。
対して、この傷物語の主要登場人物は、主人公の阿良々木暦、吸血鬼のキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード、そして委員長・羽川翼、この3人です。必然的に面白い会話はあまりありません。(セカンド・シーズンの「鬼物語」では、キスショット改め忍野忍も、面白キャラとなってしまいますが、、、)

でも、すごく感動する、いい話でした。
西尾維新さんはこういう正統派の小説もいけるんだって、本気でそう思いました。


アニメ「化物語」のアバンタイトルの委員長のパンチラ・シーンの意味も、やっと分かりました。さすが西尾さん、パンチラの描写にここまで行数を費やすとは。
 そうか、春休みに、委員長と暦くんの間には、こんな濃厚なことがあったんだ。優等生と言うより、本当に、涙が出るくらいいい娘ですね、羽川翼って。 パンツを脱いで渡したり、これって完全にLOVEです。
それを、肝心の阿良々木くんが全然気づかず、後日あんなかたちで戦場ヶ原ひたぎに押し切られたら…、委員長、かわいそう、そりゃ、猫にもなるわな。

でも、「私は、その人のために死ねない人のことを友達とは呼ばない」、ちょっと行き過ぎというか、かすかに胡散臭さみたいなものも感じてしまいます。
まあ、それが「化物語」の「つばさキャット」や、後の「猫物語」(黒)(白)とのつながっていくわけですが。
 
キスショット、普通にしていれば不死のはずの吸血鬼がふさわしい死場所を求めるって分かる気がします。この辺の話は、ファイナルシーズンの終物語(中)で、しっかり伏線を回収していただきましたが、、、どこまで引っ張るんだって感じです。
「狼と香辛料」のホロも、たいくつ、孤独が怖いと言っていましたけど、不死の命を与えようとした相手がそれを拒否し死を選ぶ、切ない話です。
もちろん阿良々木くんはそんな普通の結末は望みません。
委員長も、ハートブレードも、阿良々木くんも、それぞれがみんならしくてかっこいいです。

ゆえに、私は、物語シリーズ全19巻で、一番好きな1冊といわれたら、この「傷物語」を挙げます。
来年1月、待ちに待った「傷物語」劇場版、公開です。でも3部作はちょっとやりすぎでは。
全部見ようかなー、みるんでしょうね、やはり。