「ドグラ・マグラ」(夢野久作) | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

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廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

ドグラ・マグラ

 

(内容)
昭和十年一月、書き下ろし自費出版。狂人の書いた推理小説という異常な状況設定の中に著者の思想、知識を集大成し、”日本一幻魔怪奇の本格探偵小説”とうたわれた、歴史的一大奇書。


なんでも、この夢野久作の「ドグラ・マグラ」、小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」、中井英夫の「虚無への供物」、この3作品を日本三大奇書と呼ぶそうで。
そんな本があるのなら読まずにはいられません。
 
いやー、長かった。 中盤をすっ飛ばして読んでも変わらないくらいに無駄に長い。
 
主人公は通称アンポンタン・ポカン君という、記憶喪失で大学病院に入院している青年。 この青年の一人称で話は進んでいきます。
主人公は、若林という法医学教授から、お前は、親と婚約者、それに入院患者を4人を殺害する恐ろしい殺人事件を三度にわたって起こした呉一郎という男だと言われてしまう。
やがて自殺したと聞かされていた精神医学の正木教授が現れ、ライバルの若林教授の話を否定しながら、事件の動機や犯行手口を明かしていく。彼曰く、呉一郎の祖先に中国人の絵師がいて、その絵師は愛妻を殺して、その身体が腐敗していく様を巻物に残した。 正木は、記憶は遺伝を媒介に子孫に伝承するという自分の学説を証明するために子孫の呉一郎に巻物を見せ、その結果、呉一郎によるこの殺人事件が引き起こされたという。
こう書くとそれほど複雑な話ではなさそうに思えるのですが、小説のほうはそんなに簡単ではない。胎児は胎内での10か月のうちに数十億年の万有進化の夢を見るという論文「胎児の夢」、「脳髄は物を考える処に非ず」と主張する「脳髄論」、精神病院の恐ろしさを珍妙に歌った「キチガイ地獄外道祭文」など、どう考えてもストーリーラインと関係のない挿入部分がやたらでてきて、それが奇妙な話ばかりで、そしてとにかく長い。

正木教授はその理論でポカン君の記憶障害を治療しようとするのだが、実は正木はこの呉一郎の母親を巡って若林教授と恋敵だったり、さらにどんどんわけの分からない話になって、結局ポカン君が呉一郎かどうかも謎のまま話は終わってしまう。

とまあ、結局よく分からない小説だったのですが、あまりに長くて変な話なので、もう一度読もうという気にはなりません。さすが三大奇書です。ついでに、他の奇書2冊も読む気がなくなりました。
ただ、これが大正時代に書かれた小説だっていうのがすごい驚きではあります。

この本、読んだら気が狂うと言われているのだそうですが、それは別に何ともありませんでした。