ウォン・カーウァイが4Kで帰ってきた!「恋する惑星」&「天使の涙」 | 帰ってきた神保町日記      ~Return to the Kingdom of Books~

ウォン・カーウァイが4Kで帰ってきた!「恋する惑星」&「天使の涙」

 先週の19日から4Kにレストアされたウォン・カーウァイの5作品が公開中です。

 その5作品とは「恋する惑星」「天使の涙」「ブエノスアイレス」「花様年華」「2046」

 

 

 昨日、「恋する惑星」「天使の涙」を観てきました。

 僕は両作品とも日本で初公開された1990年代に観ていて、スクリーンで観るのはその時以来。

 初めて観た時は、ウォン・カーウァイのコマ落としを多用した躍動感とスピード感のある演出、センスのあるセリフに魅了されました。

 そしてそれを際立たせたのが、撮影監督クリストファー・ドイルの荒さと鮮やかな色彩がミックスされた独特の映像。

 このコンビはまさに最強でした。

 香港にはまだ行ったことがありませんが、カーウァイの映画の中に映し出される香港の街並みは、本当に魅惑的でした。

 そして20数年ぶりのスクリーンでの再会。

 カーウァイ自身の監修によって4Kレストアされた映像、5.1chに増幅された音響は、また新たなウォン・カーウァイの世界を観せてくれました。

 さすがに20数年ぶりだったので、細部は覚えてないところが多かったのですが、逆にそれがあらためて新鮮な感動を与えてくれました。

 今見てもまったく古びていません。それよりも現代の作品で、この2本を超える魅力を持った映画はなかなかありません。

 トニー・レオンフェイ・ウォン金城武レオン・ライ、etc・・・。登場する役者たちも、この映画で初めて知った人ばかりでしたが、みんな魅力的でした。

 そして劇中で使われる音楽のセンスの良さ!

 「恋する惑星」ではママス&パパスの「カリフォルニア・ドリーミング」フェイ・ウォンの「夢中人」。「天使の涙」では齊秦の「思慕的人」The Flying Picketsの「Only You」。昨日は最後に観たのが「天使の涙」だったので、劇場を出ながら思わず上機嫌で「パラララン、パラララン」と口ずさんでしまいました。

 都会の雑踏の中、数えきれない人々が暮らす中で、偶然の出会いによって引き起こされたこと、すれ違いで引き起こされなかったことを、こんなにも鮮やかに、カッコよく、そして切なく描いたウォン・カーウァイ。

 初めて観た当時は、ただただカッコいい!としか思わなかったのですが、いま見直してみると、都会の生活者の孤独や優しさを繊細に表現していて、時代に関係なく共感できる物語だと感じました。

 そして今回「恋する惑星」と「天使の涙」を続けて観てみると、実はこの2作品には共通するモチーフがたくさんあることに気がつきました。

 両作に登場する金城武は、役柄こそ違うものの、名前はどちらも「モウ」。

 「恋する惑星」で主要な舞台となる軽食スタンドは、「天使の涙」にもよく似た店が登場し、物語のポイントとなる役割をします。

 同じ香港を舞台にしているということもあるのでしょうが、今風に言えばマルチバースのような関係だと思います。続けて観ると、まるで2部作のような面白さがあります。

 昨日は公開直後の日曜だったということもありますが、両作品とも満席でした。しかも若いお客さんが多い!

 1990年代、当時20代だった僕が魅了されたように、今の若い世代も魅了するだけの力を持った作品であることは間違いありません。

 残りの3作品もぜひ観よう!と思います。