谷口ジローの魅力を再認識 | 帰ってきた神保町日記      ~Return to the Kingdom of Books~

谷口ジローの魅力を再認識

 現在発売中の月刊誌「東京人」の特集は“描かれた風景を「歩く」愉しみ 谷口ジロー”

 

 

 谷口ジロー氏は日本のみならず、世界的にも評価が高く、海外にもファンの多い漫画家。2011年にはフランス芸術文化勲章シュヴァリエ章を授与されている。2017年に惜しまれつつこの世を去った。享年69歳。

 僕が谷口ジロー氏の魅力にハマったのは、今やドラマもシーズン9まで行っている人気作「孤独のグルメ」だ。もっともこの作品は原作が久住昌之氏で、谷口ジローは作画を担当している。そんなこともあり谷口氏自身は、この作品を自分の代表作と呼ばれることに抵抗があったようだ。しかし谷口氏の緻密で味わいのある絵だからこそ、この作品は名作になったと言って過言ではない。

 その後、いくつかの作品を読んできたが、「孤独のグルメ」以外で僕の好きな作品は「神々の山嶺」と「歩く人」。

 「神々の山嶺」は夢枕獏氏の小説の漫画化。夢枕氏の小説は魂の震える大傑作だが、それを完璧に漫画化した谷口氏の画力も目を見張るものがある。日本の漫画史に残る傑作だと思う。

 「歩く人」は吹き出しの少ない短編集。主人公の中年男性が近所を散策している姿を描いている作品。取り立ててドラマチックなことが起きるわけでもないのに、なぜか何度も読み返したくなる不思議な魅力がある。これもひとえに谷口氏の絵の力に依るところが大きい。

 そんな谷口氏の漫画の魅力を、夏目房之介、夢枕獏、関川夏央、久住昌之、天野喜孝、片岡義男など錚々たるメンバーが語り尽くす。

 作品の引用も多く、谷口氏の作品の書誌一覧もあり、資料的価値も高い。谷口ジロー氏のファンなら、必携の1冊。

 

 10月16日からは世田谷文学館で「描く人 谷口ジロー展」が始まる。谷口氏の原画が多数展示されるとのこと。これは見に行かねば!

 また谷口氏初の本格選集「谷口ジローコレクション」が10月28日から毎月2冊ずつ、5ヶ月に渡り刊行される。サイズが雑誌と同じB5判というのがうれしい。第1回配本は『父の暦』と『「坊ちゃん」の時代』第1部。これは全巻そろえたいなあ。

 これを読んでいたら、また谷口氏の作品を読み返したくなってきた。