ついに待望の公開!「くじらびと」
昨日から待望の全国公開が始まった「くじらびと」。
今日、新宿ピカデリーでの舞台挨拶付き上映に行ってきました。
昨年の11月に試写会で観て以来の2度目の鑑賞。その時は試写室の小さなスクリーンだったけれど、今日は新宿ピカデリーのスクリーン3(12.80m × 5.30m)。全部で10あるスクリーンの内、3番目に大きなスクリーン。
このスクリーンは車椅子席が前から3列目の正面にあり、とても観やすくかつ迫力があります。車椅子ユーザーにはオススメのスクリーンです。
試写会で見た時は、初めて目にした映像に圧倒されましたが、今回あらためて大きなスクリーンで観て、この映像の持つ本当の凄さが伝わってきて新たな感動がありました。
1997年、この映画の監督であり、写真家の石川梵さんの写真集「海人」と出会い、2017年、この映画を作ることを石川さんから聞き、クラウドファンディングで応援。しかしコロナ禍により、本来なら昨年だったはずの公開が延期に。
今年になり9月公開は決まったものの、8月に新型コロナウイルスの感染が第5波で急激に拡大。石川さんも直前までこのまま公開するか、それとも再延期するか、相当迷われたようですが、予定通り公開。
感染拡大防止のため販売席数を半分にしての公開でしたが、劇場は僕を含めずっと待ち望んでいた観客でいっぱいでした。
そんな困難を乗り越えての公開だったので、ずっとこの作品を応援してきた一人として感無量でした。
この映画はインドネシアのレンバタ島にあるラマレラ村での伝統的な鯨漁を追ったドキュメンタリー。その鯨漁とは、小さな船で海へと漕ぎ出し、銛一本で身体ごと鯨に向かって飛び込んでいくダイナミックな漁です。時には傷を負い、暴れる鯨により船が破壊されたり、漁師が亡くなることもあります。
400年も続くそんな命懸けの漁を、3年間に渡りラマレラ村に通い、映像に収めたのがこの作品です。石川さんとスタッフの皆さんの熱い思いがスクリーンから伝わってきます。
この映画ではドローンによる空撮が何度も登場します。特に鯨漁の最中に、船上、ドローンの空撮、水中と様々な視点で漁の一部始終をとらえたクライマックスの映像は圧巻です。
脚本があり、計算され尽くされた物語ならともかく、偶然に頼り、一発撮りのドキュメンタリーで、なぜこんな映像が撮れたのか!?石川さんの執念すら感じさせる驚愕の映像です。おそらくここまで迫力のあるネイチャードキュメンタリーは、世界にもそうないでしょう。
今回、大きなスクリーンで観て、何度も登場するドローンによる空撮映像は、もしかしたら神の視点ではないか?と感じました。
この作品では「命」が大きなテーマです。村人の命。鯨の命。そしてそれらを取り巻くあらゆる命。
そんな命に分け隔てなく注がれる視線。この視線の前では、人も鯨も魚も、みんな公平です。
上映終了後の舞台挨拶で、ゲストのひとりで冒険家の関野吉晴さんが、ラマレラ村の漁師を「フェア・ハンター」と呼びました。
これは獲物に対して、対等な立場で対峙するハンターのことです。捕鯨砲などの近代装備を使って安全な方法で漁をするのではなく、命と命をぶつけ合い、死を覚悟しながら漁を行うハンターのことです。
ラマレラ村の人々は、命を賭けて鯨を獲ります。だからこそ、彼らの命を繋いでくれる鯨に対して、深い敬意と感謝の念を持っています。ラマレラ村の人々にとって鯨は単なる食料ではありません。彼らの命をつなぎ続ける、同じこの自然の仲間なのです。
命とは全ての生き物に対して公平なものである。そんなことをこの映画は教えてくれているのだと思います。