箱根で本にまみれる | 帰ってきた神保町日記      ~Return to the Kingdom of Books~

箱根で本にまみれる

 先週、夏休みをとって1泊2日で箱根に行ってきました。
 宿泊したのはブックホテル「箱根本箱」
 本に囲まれて「暮らす」ように滞在することをコンセプトに、昨年の8月にオープンしたホテル。オープン当初は出版業界を中心に話題となっており、気になっていたのですが、ようやく宿泊が実現しました。
 外観はあまりホテルっぽくなく、最初はどこにあるのかがよくわからず、車でウロウロしてしまいました。それもそのはず、元々は出版取次会社・日販の保養所だったマンションを改築したもの。
 エントランスを入ると、目の前には2階の吹き抜けまで届くガラス窓があり、その向こうには箱根の山々が広がっています。
 そしてその両側には天井まで届く本棚が!この光景を目にしただけで、本好きの胸は高鳴ります。
 
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 チェックインを済ませ、客室に案内されると、この部屋がまた素晴らしい!全部で18の客室があるのですが、その全てに露天風呂と本箱があります。本箱には本好きの著名人がセレクトした本が並んでいます。誰が選んだ本なのかは、並んでいる本のどれかにその人の選書について書かれ栞が挟んであります。それを探しながら、誰が選んだのかを想像するのも楽しいのです。
 
 
 食事までの時間、館内を見て回りました。ここにある本は、24時間読み放題。メインのエントランスの本棚以外にも、館内のあちこちに本棚が設置されています。どの本もホテルに滞在中は、自室に持ち込み自由です。さらに気に入った本は買って帰ることもできます。
 
 
 自室やエントランスのロビー以外にも、独りでこもって読書に没頭できるスペースがあちこちにあります。
 
 
 ロビーにはソファーが用意されており、ここでも読者ができます。コーヒーと紅茶のベンダーマシーンが設置されており、滞在中は24時間飲み放題です。
 自分のスタイルに合った方法で読書に集中できる、まさに本好きのための空間です。
 
 
 この日は雨だったのですが、天気が良ければウッドテラスで、箱根の山々を眺めながらの読書も楽しめます。
 
 
 さらに嬉しいのは、地下1階にミニシアターがあること!ここではショートフィルムの総合ブランド「ShortShorts」とコラボレーションした短編映画が24時間上映されています。「ShortShorts」とは俳優・別所哲也氏が代表をつとめる国際短編映画祭ショートショートフィルムフェスティバル& アジアと連動したショートフィルムの総合ブランド。この中から厳選された作品が、月替りで上映されています。1本あたり5〜20分の上映時間で、全部で5〜6本の作品が上映されています。全部見ても1時間くらいです。
 同じ地下1階に大浴場があるので、風呂上がりに1本、なんて楽しみ方もできます。
 
 
 食事はというこ、これがまた素敵です。
 「オーガニック&クレンジング」をテーマに、地元の食材を使った身体に優しいコース料理となっています。
 
 
 
 ちなみに朝食はこんな感じです。
 
 
 美味しい料理を堪能した後は、再び選書と読書に没頭できます。
 
 このホテルに来て気づいたのは、女性の一人客がとても多いこと。この日は満室だったようですが、見た感じ3分の1は女性の一人客だったようでした。逆に男性の一人客はいませんでした。
 それともう一つの特徴は、ホテル内がとても静かなこと。近年の日本の有名観光地は、外国人観光客の増加で、いろいろな国の言語が飛び交い、騒がしい印象があります。ホテルも同様で、沖縄のホテルに宿泊したときなどは、ロビーは多言語でワイワイ賑わっています。
 ところがこのホテルではそういうことがありません。そもそも読書が目的でやって来る人がほとんどなので、まず条件として日本語の本が読めること。またホテル内にはミニシアターを除けば本以外のアトラクションはないので、本に興味のない人には魅力が ないかもしれません。
 
 美味しい料理を食べて、好きな時に温泉に入り、好きな時に好きなだけ本が読める。本好きには夢のような空間です。正直1泊2日では物足りなかったです。
 
 最後にバリアフリーについて。
 残念ながら、このホテルはバリアフリー的には難ありです。
 まずエントランスには、2段の段差があります。
 また、ホテルの客室に入るには20センチくらいの段差が一段あります。さらに扉が内開きなので、部屋に入るときはキャスター上げができれば、何とか一人で入れなくもないですが、出るときは介助がないとほぼ無理です。
 
 
 各客室にプライベートな露天風呂があるのは、車椅子ユーザーにとっては大変ありがたいのですが、バリアフリーに特化した作りではありません。今回は一緒に行った妻に介助してもらいながら、ベランダにあったプラスティックの椅子を利用しながら入ることができました。僕の場合は、胸椎の10番の損傷なので、ヘソから上の上半身は問題なく使え、体幹もある程度あります。だから入れました。体幹の効かない人には、かなり困難で、数人の介助が必要かもしれません。
 でもこれ以外には、際立ったバリアーはありません。3階建てのホテルですが館内にはエレベーターがありますし、客室入口とエントランス以外はバリアフリーです。
 ただし、メインエントランスの本棚については、一部階段を使わないと行けない棚があります。その棚については、妻にスマホで写真を撮ってきてもらい、気になった本があれば持ってきてもらいました。
 完全バリアフリーではないものの、介助者がいて、障害の程度によっては、車椅子でも十分に滞在が楽しめます。
 ぜひまた行ってみたいホテルです。