パーフェクトワールド(1)【電子書籍】[ 有賀リエ ]
楽天市場

昨日からフジテレビで始まったドラマ「パーフェクトワールド」を観た。
有賀リエの同名タイトル漫画のドラマ化。原作漫画は発売当初から読んでいた。
主人公の女性・つぐみが、仕事先で久しぶりに再会した高校時代の初恋の相手・樹。しかし彼は事故で脊髄を損傷し、車椅子生活になっていた、というプロットは同じだが、年齢設定を少し高めにしている。
原作漫画は車椅子の脊髄損傷者の生活をよく取材し、丁寧にリアルに描いているところに感心しながら読んでいたのだが、ドラマもそれを受け継いでいた。
放送初回から印象的な描写やセリフが登場する。
樹を演じる松坂桃李の演技が良い。実際の脊髄損傷者である僕の目から見ても、車椅子生活者の動きをよく研究していると感じる。
例えば冒頭のつぐみと樹が再会する居酒屋のシーン。掘りごたつ席に座っていた樹が帰るときに、掘りごたつから自分の足を持ち上げて出し、長座の姿勢で両腕で腰を浮かせながら(“プッシュアップ”と言う)後ろ向きに移動し、上がり框から自分の車椅子に移乗する一連の動き。僕も座敷席の居酒屋で飲むときにはよくやる動きなのだが、見ていて違和感がなかった。
また樹が自宅に帰ってから室内用の車椅子に乗り移る動作や、つぐみの前でやってみせる“キャスター上げ”と言う車椅子の前輪を持ち上げて車椅子を走らせるテクニックなど、実に自然に演じている。
一方、樹が排泄機能障害のため尿失禁してしまうシーンがあったり、褥瘡と尿路感染で倒れてしまったりと、かなり踏み込んだ描写もある。
視聴者はドラマの展開を盛り上げるために、あえて衝撃的なシーンを取り入れていると思って見ていたかもしれないが、脊髄損傷者にとってはある意味日常の一部であり、決して特殊な場面ではない。
僕自身は脊髄損傷者生活がもうすぐ10年になるけれど、今でも年に何度かは失禁をしてしまうことがあるし、小さなものだけれど現在治療中の褥瘡もある。
ドラマの中で松坂桃李くんは、尿失禁の場面でつぐみに向かって「これ以上格好悪いところ見られたくない」と、辛そうな表情をみせるけれど、我が家の場合は
僕「あちゃー、漏れちゃった〜」
妻「あらあら、しょうがないわね〜」
繊細さのかけらもないのである。
まあ、僕の場合は能天気すぎるのではあるけれど、脊髄損傷者は誰もが多かれ少なかれ、同じような悩みを抱えながら日々生活している。
7年前、映画「最強のふたり」を観たときに、このブログで「声に出しては言いにくい、脊髄損傷者の悩み」という文章を書いた。今でも月に1000アクセス以上あり、同じような悩みを抱えていたり、関心を持っている人がいるのだなあ、と思っていた。
ところが昨日のドラマ放映中から、この文章に対するアクセスが急増。普段なら1ヶ月分のアクセス数を昨日、今日で超えてしまった。ドラマを見た人が排泄障害に関心を持ち、ネットで検索したらこのブログにたどり着いたのではないかと考えられる。
車椅子の人といえば、歩けないだけだと思っている人が多いと思うのだが、実はそれ以外にもたくさんの問題を抱えながら生きているのだ、ということをこのドラマを通じて知った人も多いのではないかと思う。
以前のブログでも書いたことがあるのだけれど、障害者の生活を知ってもらうことが本当の意味でのバリアフリーの第一歩だと思っている。
そしてこのドラマがそんなきっかけになってくれれば、と今後の展開に期待している。