スノーデン | 帰ってきた神保町日記      ~Return to the Kingdom of Books~

スノーデン

『スノーデン』

 

 

 スノーデン事件と言えば、ついこの間の出来事のように思えるが、それを早くも映画かしてしまうのが、アメリカのすごいところ。しかも監督はオリバー・ストーン。気にならないわけがない。

 2013年、NSA(米国国家安全保障局)職員だったエドワード・スノーデンが、イギリスのガーディアン紙を通じて暴露したのは、アメリカ政府が秘密裏に構築した国際的な監視プログラムの存在だった。

 世界に衝撃を与えたこの事件。アメリカ政府は彼を国家に対する裏切り者として手配。スノーデンは国を捨て、ロシアへと亡命する。

 元々はスター・ウォーズが好きで、天才的なIT技術者だったスノーデン。国のためにつくしたいという強い思いから、その技術を活かしてCIAに入局。

 しかし仕事を通じて、アメリカ政府が世界中に秘密の監視網を張っていることを知る。それはごく普通の人々のプライバシーまで覗き見ることができるシステムだった。

 さらに彼が開発したプログラムが、彼の意に反して無人攻撃機のプログラムに転用され、テロの抑止を名目に無差別攻撃が行なわれている事実を知る。

 彼が思い描いていたアメリカの正義とは何だったのか?

 高給の待遇や、家族や恋人との幸せな生活を投げ打ち、彼は自分が信じる正義のために人生を賭けた決断をする。

 この事件はニュースや新聞、関連本で詳細は報じられているが、こうして映像で見せられると、あらためて国家によるテクノロジーの濫用の恐ろしさが伝わってくる。

 国民の見えないところで何が行なわれているのか?本来それを調べ、伝えるのはジャーナリズムの役割だと思うが、ジャーナリズムにも限界がある。

 スノーデンは反逆者とされ、先日もトランプ大統領が、スノーデンが帰ってきたら徹底的に懲らしめる、というようなことを言っていた。

 しかし豊かで幸せな生活を投げ打ってまで、告発に踏み切ったスノーデンは、やはり21世紀の英雄なのだと思う。

 テクノロジーが発達し、世の中の価値観が多様化する中で、正義の立ち位置も不安定に移り変わっていく。そんな時代に一石を投じた作品。