プロフェッショナルの仕事とは? 「ハドソン川の奇跡」 | 帰ってきた神保町日記      ~Return to the Kingdom of Books~

プロフェッショナルの仕事とは? 「ハドソン川の奇跡」

『ハドソン川の奇跡』

 

 

 2009年の1月に実際に起きた事件の映画化。

 監督のクリント・イーストウッドは、今回も熟練の演出で、プロフェッショナルとは何かを見事に描いている。

 乗員乗客155名を乗せたサレンバーガー機長の操縦する飛行機は離陸直後、エンジンに鳥の群れが衝突したことでエンジンが停止。ただちに近隣の空港に引き返すようにと管制官からの指示があったが、そこはニューヨーク上空わずか850メートル。空港に引き返せそうとすれば大都市に墜落し、大惨事となると判断した機長は機体をハドソン川に不時着水させる。機体は無事に着水し、155名全員が生還する。

 一躍ヒーローとなるサレンバーガー機長。

 しかし事故調査委員会は、空港に引き返す余裕は十分にあり、むしろ乗客たちを危険な状況に引き込んだのではないかとサレンバーガーを追求する。

 はたして彼の判断は間違っていたのか?

 

 コンピューターのデータ解析や、シミュレーターでの同一条件でのフライトでは、空港に無事に引き返せたという結果が出る。

 しかしそこには、その場にいたパイロットたちでしか知り得ない重要な要素が抜けていた。

 人はかつてない困難な状況に陥ったとき、どういう判断を下すのか?

 その判断を裏打ちするのは、運や偶然などではなく、蓄積された経験と正確な技術。そして155名の命を救ったのは、決して奇跡などではなく、もちろんサレンバーガー機長ひとりの功績でもない。

 その答えは物語のラスト、機長自らの言葉で語られる。このシーンが実にグッとくる。

 エンドクレジットでは、実際のサレンバーガー機長と生還した乗客たちの姿が映し出され、これも感動的。

 プロの仕事と誇りを高らかに歌い上げた傑作。