先ほど「ヘアスプレー」の6月7月全公演中止が発表されました。

未だ収束の兆しの見えないコロナ感染の状況を鑑み、このような判断となりました。
「可知寛子扱い」でチケットをご購入いただいている皆様には、チケットの払い戻しに関する詳細を後日お一人ずつご連絡させていただきます。


我々ヘアスプレーカンパニーは本当にギリギリまで公演実施の可能性と希望を持って日々の状況を見守って来ました。

4月6日に東京では緊急事態宣言が出され、沢山のカンパニーが未来の公演を中止するのを目の当たりにした時、6月に初日を迎える「ヘアスプレー」もこのままでは難しいんじゃないだろうか。ということが頭によぎっていました。

しかし「2週間後の未来を作るのは今のあなたの行動です」と繰り返される言葉に、小さいけれども無限の可能性を信じて、毎日毎日希望を捨てずに生活してきました。ヘアスプレーカンパニーに立ち上げから参加しているスタッフのみんなも同じ気持ちであったと信じております。


「ヘアスプレー」はオーディションでした。
ちょうど大学卒業くらいの頃映画版を見て夢中になった作品。その頃からいつか日本でやってくれないかな〜、絶対出たいな〜と思っていました。

そしてついに2020年、日本カンパニーでの上演が決まったのですが、私はすでに35歳。
正直オーディションを受けるのを迷いました。その時私の手元に来ていた募集はティーンのアンサンブルだけだったので。
でも今回を逃したらもう二度とチャンスはないだろうとオーディションを受けに行きました。
正直その時の私は誰がどう見ても場違いな感じで、バリッバリに歌い踊る超フレッシュな女優さんたちの中で、今自分で振り返ってみてもなんだかよく分からない沈んだおばさんでした。ここ数年の消したい過去トップ3に入るくらいの情けない1日でした。


でも、人生何があるかわからない。誰が自分を見てくれているかわからない。
なんとキャスティングしていただいたのが「プルーディー役」でした。
初めて自分の役の名前がチラシに載ったんです。予期せぬ涙が出ました。


あれから約一年。この状況下ですからまだ一度も本稽古ができていない中、私の手元にはもう随分前から楽譜も製本された台本も届いており、家で何度も何度も一人練習をしてきました。

今は、一年前とはまた別の予期せぬ形で涙が出てきます。


私自身としては、新型コロナの影響をいち早く受けた「天保十二年のシェイクスピア」が2/28に公演中止となり、それから約2ヶ月間悔しいけれども耐えなくてはいけない日々を送り続けております。

そんな中、SNSや物販では本当に沢山のミュージカルファンの方々から身に余るほどの熱い応援をいただき、感謝してもしきれません。

吐き出したい思いはありますし、一人家でずっと考え続けて不安で眠れない夜も沢山あります。

ですが今やるべき事、できることは自分の命を守り大切な人の命も守り、別に大切でもない人の命も守ることだと思っています。

私の家族は私以外全員が医療従事者です。自分の命を張って他人の命を守っています。
自分の悔しさなんかと家族や大切な人たちの命を引き換えにする事はできません。もちろん自分の命も。そしてこれを読んで下さっている貴方の命もです。
これからの自分の歩む道や人々の未来は人生が続く限りいくらでも切り開くことができる。悔しさも取り戻す事ができる。命さえあればです。

芸術は目に見えるモノだけではないから自分の心に宿っている限り決してその灯は消えません。楽しみが失われたらまた別の楽しみ方を閃く事ができるのが「人間」です。少なくとも私はそういう人間です。


自分の行動次第で、必ず近い未来お客様の笑顔でいっぱいの「生」の舞台でお会いできる事を私は信じています。
その時まで皆さまもしばし耐えてお待ち下さい。

もし仮に経済的に苦しくなって、家がなくなろうと野草を食べる事になろうと(大丈夫です、元山岳部なんで)自分に未来がある限り私は必ず生きて舞台に復活したいと思います。



最後になりますが、
皆さま、どうかこの悲しい連鎖を少しでも早く終わらせましょう。

そしてくれぐれも、ご自愛下さい。



可知寛子