「琉球の陽のぬくもりが雪の日の身を温める久米島紬」

    成澤 弘子

 

 

 

日本列島は、本当に南北に長く広がっております。だから、冬の風景がまったく違う。

 

例えば、雪国の冬の生活を女性陣の織物が支えた時代がございました。そうして継承して、いろんな地方の特産物と言えるような見事な反物を作る文化が伝承されて来たわけですが、紬や絣のルーツをたどると、沖縄県の久米島にたどり着きます。沖縄では、織物が献上品であり、人生そのものを支えるものでございました。

 

私も、1枚、久米島紬を持っております。そりゃ、物持ちですので、いろいろ持ってはおりますが、冬の一番寒い日は、普段もよそ行きもなく、また、裏が毛ばだった温かい洋服よりも、久米島紬を着ます。だから、少なくとも、年に1回は着ますお気に入りでございます。

 

紬の織りがとっても詰まっているんですの。別に糸が太いわけではなく、むしろ、細いものを密に織っているから温かいんですわね。八掛に塩瀬をつけましたので、滑りが良く動きやすく、身体について来るような着心地。それでいて、そのオンスで、とっても軽い。

 

実は、超~着物通の母が衝動買いしたものの、もったいなくて着られずにとっておいたものでございます。それを、私はホイホイ、しつけを取って、じゃんじゃん着ちゃうんですもの、ドラ娘ね。樋口一葉の「わかれ道」という小説に、人のお初を着ると出世しないよという言葉がございます。仕立物の着物を、俺様が着てやろうかという薄幸の少年を戒めた言葉でございます。

 

う~ん、だから、出世しないのか~~~。贅沢ばっかり覚えて。