お盆から、しばらく渡哲也追悼特集を致して参りましたが、ちと、ここいらでお休みをしましょうかね。けっこう、私、石原軍団の話は出していると存じますし、これからも出すと存じますので。

ということで、今日の「歌謡曲だよ、成澤弘子」は、あの渡が、こ~んな歌も歌うのだということで、「ありんこ」。

作詞:門谷憲二、作曲:山崎一稔、編曲:矢島賢

門谷憲二っていうのは、泉谷しげると活動して、古井戸などをプロデュースした人。布施明の「君は薔薇より美しい」なども作詞してます。山崎一稔は、元・三輪車のメンバーですので、どこかしら、昭和のフォークの感じが漂います。

この歌は、舘ひろしに花を持たせた「代表取締役刑事」の主題歌でございます。

裕次郎に比べて、渡は、作詞家に恵まれてませんでね、艶歌調のものは、結局、「くちなしの花」を超えられないし、小椋佳の「流氷の街」は、小椋佳じゃなくて渡哲也みたい。デュエットソングを歌っても、色気がない。真面目で体育会系だってことかしら。

その後の映画は、吉永小百合がどうしても映画にしたかった「時雨の記」で、刑事に無関係の文芸ものをおやりになりまして、う~ん、木村大作の映像がとってもきれいでした。ただ、中里恒子の原作ですが、その中里の地味な作風と、ふたりの花が合わない。着物をやたらと地味にしておりましたが、もう10年経ってからのほうが良かったんじゃないかしら。封切当時、観た時は、いやに吉永小百合が老けたと見えましたが、もっとおとなしい女性なんじゃないかな、原作は。

これはね、美男美女に生まれた宿命でね、はまり役がないの。なかにし礼の「長崎ぶらぶら節」でも、同じことが言えますの。テレビじゃ、市原悦子がやった役を、映画で吉永小百合がやってはいけません。渡も清潔過ぎてね~~~。

だから、私、これ一本という映画を最後にあげるのだったら、「誘拐」をあげます。これも木村大作の撮影がものすごくて、今なら、雑踏のひとごみをCGでごまかすところを、生のエキストラに、たまたま寄って来た野次馬で撮っちゃったの。そんな映画、今、作れないというより、作らないでしょう。だから、まだなお方は、YouTubeで、数百円で観られるようですので、どうぞ。

それにしても、私って、いろんな訃報記事とは、これまた違った角度で追うとお思いになりません? それはね、私、20代の時、フリーランスで、「週刊読売」の「会葬録」っていうページを持ってましたの。訃報を書く、年季が違いますのよ。仕事って、積み重ねですから、今、そういう仕事をしていなくても、そういう仕事をしていた私は、その後も成長しているわけですから。

だからね、日活のスーパー新人がお亡くなりになるまでの間、その人に積み重なったものが、俳優の器になっていくわけですわ。だから、短いジョージアの宣伝で、ベテランの役をやっても、過去が分かる、いいお仕事を重ねられたゆえんですわ。