「シチリア・サマー」1982年のイタリア・シチリア島を舞台に美しくも哀しい、少年たちの恋を描く | 『Pickup Cinema』

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2022年製作/134分/PG12/イタリア 監督:ジュゼッペ・フィオレッロ 出演:ガブリエーレ・ピッツーロ、サムエーレ・セグレート、ファブリツィア・サッキほか 原題:Stranizza d'Amuri 配給:松竹  11月23日公開 ★10月12日マスコミ試写関西で鑑賞

 

青い海と緑豊かな自然に恵まれたイタリア・シチリア島を舞台に、二人の少年の出会いと悲劇的な最後を描いたラブストーリー。

1982年の初夏。街ではワールドカップのイタリア代表を応援する人々の熱気であふれていた。複雑な家庭環境で育った17歳のジャンニ(サムエーレ・セグレート)は、バイクの修理工場で働きながら母と二人で暮らしていた。母は修理工場のオーナーの愛人。綺麗な顔立ちのジャンニは、街のチンピラたちにからかわれ、辛い日々を送っていた。

ある日、ジャンニはバイク事故がきっかけで16歳のニーノ(ガブリエーレ・ピッツーロ)と知り合う。ニーノの家は3世代が暮らす大家族で、父親は花火工場を営み、叔父は砕石工場を経営していた。

性格も家庭環境も異なる二人だったが、ひかれあい、やがて友情が恋に発展していった。初夏の日差しの中で育まれる少年たちの純粋で激しい想い。しかし、その時代、社会はまだ少年同士の恋を認めてはいなかった。

実話を元にした物語。陽気で無邪気なニーノ、内気だけれど情熱的なジャンニ。二人の美少年の姿はもちろん、シチリアの自然や、街並み、家族の団らん、花火のシーンなど美しい映像に心が癒される。

しかし、切ないストーリー展開に「なぜ、そうまでしなければならなかったのか?」と思うのは、私たちが現代に生きているからだろう。

2人の若者の尊い命が奪われた事件は、当時のイタリアを震撼させ、イタリア最大のLGBTIに関する非営利団体“ARCIGAY(アルチゲイ)”が設立されるきっかけとなったという。

多くの人の想いと粘り強く積極的な活動により、LGBTQの認知度が高まってきたと思えるが、このような作品を通して、さらに理解ある社会に育っていくことを願いたい。