「昼顔」 昼は娼婦、夜は貞淑な人妻。二つの顔をもつ女性の深層心理を描く | 『Pickup Cinema』

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(C)1967 STUDIOCANAL - Five Film S.r.l. (Italie) - Tous Droits Reserves

1967年/101分/フランス・イタリア合作 配給:KADOKAWA 監督:ルイス・ブニュエル 出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ジャン・ソレル

第28回ベネチア国際映画祭 金獅子賞受賞。

 

主人公はパリに暮らす貞淑で美しい人妻・セヴリーヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)。医師の夫ピエール(ジャン・ソレル)と何不自由ない幸せな生活を送っていた。しかし、彼女は不感症で夫の夜の要求を受け入れかねていた。

その一方で、マゾヒスティックな妄想に取り付かれていたセヴリーヌは、友人から共通の知人が娼館で働いていると聞き興味を抱く。オペラ座近くに高級な娼館があることを聞いた彼女は、好奇心からこっそり店を訪れる。

そこで、マダムのアナイス(ジュヌヴィエーヴ・パージェ)から「昼顔」という源氏名を付けてもらい、さっそく働くことになる。

「昼顔」として働くのは午後2時から5時まで。

最初は戸惑っていたセヴリーヌだったが、さまざまな性癖をもつ客の相手をするうちに快感を得られるようになり、自らを解放していく。

そして、夫への愛情も深まっていくのだった。

昼は娼婦、夜は貞淑な妻として満ち足りた生活を送っていたセヴリーヌだったが、独占欲の強い怪しげな若い客に尾行され、思わぬ事件に巻き込まれていく。

冒頭、激しいシーンから始まるが、やがてそれがセヴリーヌの妄想だとわかる。

その妄想は不感症に対する罪悪感と、拒絶しながらも内心は凌辱されたいというマゾヒスティックな願望の表れであり、物語の随所に白日夢のようなシーンが散りばめられている。

観ているうちにどこまでが妄想でどこからが現実なのか境界線がわからなくなってしまう。

ラストまでその状態が続く、非常に奥深い作品だ。

決して単なる不倫のドラマではなく、性に対する男女それぞれの概念と願望がセンセーショナルな映像の向こうに描かれている。

サンローランがデザインを手がけた60年代ファッションもお洒落で可愛い。