ふらつきながら階段を降り自転車置き場まで行った正夫だったが、もう山村の姿はなかった。 正夫はすぐに部屋に引き返す勢いがなく、しばらくマンション内にある公園のベンチに座って休憩してから部屋に戻ろうと、またふらふらしながら公園まで歩いて行くと、なんと公園のベンチに座って話し込んでいる二人の姿を見つけた。 薄暗くなった公園の街灯の下にあるベンチには山村と京子さんが座っていた。
(あっ 山村!)
もう少しで声を出すところだったと、あわてて正夫は公園を囲う様に植えられている生垣に身を隠した。
( いいぞ~ こんな決定的瞬間が聞けるとは、今日はおれはついてるな~)
そんな事を思い、わくわくしながら、二人の話が聞こえそうな所まで身をかがめながら這うようにして近ずき聞き耳を立てた。 すると京子さんがしきりの謝り、山村の機嫌を取るような話が聞こえてきた。
(う~ん これはほんとに山村の言う通り脈があるなっ。 ひょっとするとひょっとするな! それじゃ そろそろプロポーズするところが聞けるぞ、 早く言え! 山村)
と思いながら正夫は足のしびれるのを辛抱しながら聞いていた。 すると
「あら 正木さん。 どうしたんですか? そんな所に座って、気分でも悪いんですか?」
と隣の部屋の森下さんが心配そうに大きな声で話しかけてきた。 くそ~ っと思いながら、正夫は急いで立ち上がったがしびれた足が思うように動かず、その場でまた座り込んでしまい。 なんて言ぉうかと考えたが酔ってて頭わ回らず
「はっはっはっはっは~っ」
っとただ情けなく笑ってしまった。 その姿を見て森下さんはあきれる様に言った。
「いやだわ~ かなり酔ってますね! 分かったわそこにジ~ッとしててくださいね、今奥さんを呼んでくるから」
と言って、森下さんは走って行ってしまった。 ホッとしたのもつかの間、正夫が隠れていたのに気がついた山村と京子さんが正夫の前に立って言った。
「正木 お前何やってんだよ! 立ち聞きしてたな!」
と大きな声で言って、山村は正夫を睨みつけた。
「いや~っ これには深~い訳があるんだよ山村 聞いてくれ!なっ はっはっはっはっはっ」
と笑ってごまかしながら立ち上がりかけたが、まだ足のしびれが取れず、情けない格好のまま正夫はため息をついた。
つづく