沖縄で子育てをしながら仕事の度に状況する今、実家で娘を見てもらう機会が多くなった。

故郷は埼玉県春日部市だが、東京に居ればいつでも行けると思い、これだけ度々立ち寄ることはなかったと思う。

年に1~2度の帰省も、両親と会うためであって、近所を歩いたり公園に行ったりふらふら散歩することはなかった。

今再び、故郷を感じている、と思う。

 

駅周りも家の近くもほとんど変わらない景色だが、見え方はずいぶん変わった。

空が広い。関東平野のど真ん中に位置する春日部は、大きな山もなく海もなく、何てことない田園地帯。

何にも特徴のないところだなってずっと思っていたけれど、全国各地を訪ねてみて、これほど広い平野こそ特別なことが分かった。

こんなに空が美しく見られるところに住んでいたんだ。その場所を娘と歩いている時間、幸せに思う。

 

3歳の頃から通っていたピアノ教室もまだある。負けず嫌いの私は弾けないと楽譜をくしゃくしゃにして悔しくて涙を流しながら何度も繰り返し練習した。音楽の中学に進もうと思うくらい、一時はピアノの道へ進もうと真剣に思ったこともあった。初めて買ってもらったピアノが寂しそうに今もリビングに佇む。その鍵盤を娘が無邪気に叩く姿を見ている自分。娘もピアノが好きになるかな。

 

時間が進む中で、永遠に変わらないものもある。母のおにぎり。大人になるとずいぶん味覚が変わるものだけれど、母のおにぎりの味はずっと同じ。小学校の運動会の時も、寒い真冬の大学受験の時も、私より1時間も早く起きておにぎりを握ってくれた。

少し塩の効いたご飯に昆布、のりはパリパリではなくお米の水分を含んで少ししっとりしているおにぎり。これはどこで食べるおにぎりより抜群においしい。自分で握るおにぎりと全然違う。何だろう。今でも地元のマラソン大会に招待されて走る機会があるのだが、その朝は必ずリクエストしてしまう。

 

今回の帰省でも変わらぬおにぎりの味に幸せを感じ、つい書きたくなった。

私も娘に残る母の味を残せるのだろうかおにぎり