ビジネス誌の記事に、「経営に使える原価計算システムがある企業は1割にも満たない」という話があった。私のこれまでの経験でも、経営状況を測定するための管理会計がしっかりと整備されている会社にお目にかかったことがない。もちろん、事業ごとの売り上げとか粗利くらいはわかるようにはなっている。だが、それだけでは問題を分析して、今後の方向性を見直すことはできない。


典型的な分析として、顧客別の収益性がある。顧客によっては、「バーゲン」のときにたくさん買っているだけで、収益性が低いどころかマイナスであったりする。そういう一見優良顧客に対して割引や特典などを提供していないか。あるいは、規模が大きいというだけで大きな顔をしていて、あれやこれやとサービスを要求したり、なんくせをつけてやたら手間がかかる顧客がいる。その際、其の顧客に対応している社員のコストを計算したら、利益が出ていない場合もある。その時間を他社の開拓に振り向けたほうが収益が高まるかもしれないのだ。機会コストということである。


これらの背景には、事業責任者の信じ込みがあるように思われる。それは、お客さまは神様だ、利益がでていないお客様なんているはずがない、とか。(新規顧客の獲得には相当のコストがかかっているにもかかわらずそのことに気づいておらず)、何しろ顧客数を増やせばよい、とか。平均して儲かっていればいいのだから、顧客別あるは顧客セグメント別の収益性のデータなんて必要ない、とかだ。


戦略は策定しただけではだめで、実行するのは当然だが、其の結果を測定してみなければならない。測定していないためにそもそも問題に気づかなかったり、あるいは測定しないで良いと決めつけたりしていないか。戦略を実行した結果が測定できるように管理会計を整備しておかなければならないはずだ。もっといえば、戦略とは投資なのだから、投資の効果、つまり、リターンを測定するのは当然のことだと思うがどうか。


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トップダウンで降りてくる事業戦略にはやらされ感が強く、上手く行かないことはよく知られている。よくあるのは、トップが外資系コンサルに事業戦略の立案を依頼し、出来上がった事業戦略を上から押し付けるやりかたである。このやりかたではうまくいかないということにさんざん思い知らされたのか、マッキンゼーのディレクターであった名和高司氏は、マッキンゼーを退職する前に書いた「学習優位の経営」でそのことを述懐している。


では、ボトムアップで事業戦略を立案するのはどうかというと、経営層の承認を得るには大変なエネルギーを要する。現場が感得した想いを経営層が理解できる言葉に翻訳することは難しいからだ。経営層は最適解を要求するので、それを実現するための完璧な計画を作成しなければならない。また、斬新なアイデアは上手く行く証拠はないから、経営層はリスクを減らそうとして、ありもしない「成功する証拠」を要求しがちである。


そもそも現場が事業戦略を立案すると、次のような問題が生じる。第一は、視野の問題だ。現場の人間は自分の担当しか見えない。現場というと通常主任クラスまでだが、キャリアが浅いので自社および業界に関わる経験が限られているからである。つまり、事業に関わる主な機能全てを把握することは容易でないし、自社業界についてある程度わかっていても、周辺業界まで把握できているかというと難しい。第二は、視座という問題だ。経営者としての目線の高さといってもよい。戦略とは経営の方針である。主任がいかに優秀だとしても、経営者としてのマインドをもてるかというとそれは難しい。経営者としての確固たるマインドがないと、自分と自分の部下がやってみたいと思う戦略オプションを選択してしまいがちである。主任という、まだまだ発展途上のキャリアの段階で、経営者としてのマインドを持てといってもそれは無理というものだ。第三は、大局観という時間軸だ。日々の実務をこなすことが主な業務なのに、長期的な視点をもって先を見通すことができるか、ということだ。仮に、経営企画担当として、長期的な視点を持つことが可能であっても、先を読むにはそれなりの情報や経験が必要である。主任クラスでは人脈にも限りがあるから、自社の経営環境に関わる生の情報を入手することは容易ではない。


そこで、組織の垣根を越えた、クロスファンクショナルチームというミドル層(課長クラス)を中心としたプロジェクトチームが事業戦略を立案する方法をとる場合が多い。ミドルアップダウンなどとも呼ばれる。これは確かにチームに参加したメンバーが主体的になり、いくつかアイデアが生み出される。しかし、結局は、自分たちのさらに下にいる現場のメンバーに投げていくことになり、現場はやらされ感に陥ってしまうのだ。


では、どうしたらいいのか。現場が感得した想いをくみ上げ、モチベーションを維持しつつ、経営者のマインドでもって事業戦略を立案し、着実に実行するにはどうすればよいのか。最近では、ホールシステムアプローチを行う企業が増えている。それは関係者が一堂に会して進めていくやり方である。この方法だと、トップダウンでも、ボトムアップでも、そしてミドルアップダウンでもなくなる。その場に全員がいて、互いに話をし、相手の話を聞いて、お互いの想い、経験を共有し、全員で決めるので、誰もが尊重され、全ての人が主体性を感じることができるのだ。実際、1000人位までの人が集まって、組織の文化をたった数日で変えていくことができるのだ。そこで出来上がった戦略は、関係者の最大限の活力で実行されることはいうまでもない。


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人の話を聞いていると、同じテーマであっても人によって言葉の選び方にかなりの違いがあることがわかる。言葉の意味や、言葉の持つ微妙なバイブレーションによって、同じ話をしていても、関係者の間の雰囲気はかなり違うものである。


たとえば、研修やコンサルティングの場で、コントロール、競争、説得、分析、計画などの言葉が多く使われているグループの雰囲気は、どちらかというと閉鎖的で堅く、クールな感じである。メンバーの話そのものがぎこちなかったり、あるいは、自分の話をすることにエネルギーが注がれ、話を聞いていない人がいたりして意見交換がスムーズでなかったり、緩慢だったりして話が発展しないことが多い。


これに対して、自由、立ち向かう、教育、直観、創造などの言葉が多く使われている場合は、雰囲気が解放的でやわらかく、温かい感じがする。コミュニケーションはスムーズで、お互いにお互いの話をよく聞いていて、話が発展していく。前者のグループは割合まじめに話し合いが行われ、比較的線形的に展開する。後者のグループは笑いが多く、話の内容があちこちに飛ぶこともあるが、和やかに進むことが多い。


言葉の持つ意味や価値あるいはエネルギーには、ネガティブなものから、よりポジティブなパワーを感じさせるものがある。経営者は言葉を慎重に選ぶ必要があるとつくづく思うこのごろである。


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ビジネスにおける判断で直観は大切だとよく言われる。最近は直観に関するビジネス書も出版されているようだ。


いつも不思議に思うのだが、そんなに直観が大切だというなら、なぜ、直観を科学して経営に役立てようとしないのかということだ。そもそも直観とは何なのか、直観による判断が正しいのは具体的にどんな時なのか、など研究すべきことはたくさんあるはずだ。


例えば、米国の化学メーカー、ダウ・ケミカルは、新規事業の構築に関わった従業員の分析を行って、新規事業立ち上げのプロジェクトマネジャーとして理性的で直観力のレベルの高い人材ほど成功確率が高いことを発見している。


彼らは、まず、マイヤーズ・ブリッグス・テストとカーシーの4つの気質を組み合わせたテストを開発、実施した。その中で、いわゆる理性派、すなわち、直感・思考的な人は、クリエイティブで、リスクを厭わないタイプが多いことを確認している。実際、アップル・コンピューター、フェデラルエクスプレス、ホンダ、マイクロソフト、ソニーといったグローバルな企業を創設した事業家のプロフィールを調査した結果、その全員がこの直感・思考家タイプ、つまり理性派だということが判明している。


次に、クリエイティブでリスクを厭わない人でも、その程度によって業績に違いがあるのかを調べるためにマイヤーズ・ブリッグスを見直し、レインメーカー・インデックスと呼ばれるものを作り、性格のタイプと新規事業の推進に関連性があるかを検証したのだ。


直観がそんなに重要だというのなら、日本の経営者そして経営学者も、もっと直観をビジネスに役立てることを考えていいのではないか。


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ビジネス雑誌・書籍などで仮説と検証、仮説思考などが流行っている。外資系の有名なコンサルファームのパートナーから、○○の仮説を検証したところこうなりましたなんて言われると、企業の経営幹部のほとんどが信じてしまうのではないだろうか。


しかし、経営コンサルタントの立場にたってよくよく考えてほしい。コンサルティングファームとしては短い期間で効率よくアウトプットを出し、クライアントに受け入れてもらってできるだけカネを稼ぎたいのだ。仮に提案内容が実行されて成果が上がらなくても責任を負うことはないし、そもそもきちんと実行されることは少ない。また、実行されるころには状況が変化していて、成果が出なくてもいくらでも弁解する余地があるのだ。


あなたが経営コンサルタントだったらどんなことをするだろうか。まず、効率性からいえば、仮説を立てて検証するという方法が一番早い。一見、科学的に聞こえてかっこいいが、平たくいえば、こうすればうまくいくんじゃないかというモデル(もっともらしくいえば洞察力)を提示してそれが正しいことを証明するということだ。そこではどうしたって実証方法や経営者との意見交換のやり方の中でバイアスがかかる可能性が高いのだ。実際、インタビューやアンケートの取り方からして、結果を見越して期待する結果が出てくるように質問の立て方を意図的に考える等の方法がよくとられている。


プロのコンサルタントからすれば、仮説を証明するために都合のよいデータだけをピックアップしてきて積み上げればたいていのことは証明できるものなのである。つまり、黒を白に、白を黒に言いかえること可能なのだ。コンサルファームを使っている経営者はそのことをわかっているだろうか。


まさかと思うなら、谷岡一郎「社会調査のうそ」、新原浩朗「日本の優秀企業の研究」を読んでみるといいと思う。


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