『Number』(835)より
スポーツ仕事人
「地方」かつ「マイナー」
二重苦のチームを甦らせるべく立ち上がった、バスケ界の勇者とは──
折茂武彦
バスケチーム(レバンガ北海道)のオーナー
年齢···43歳
勤続···3年
前職···トヨタ自動車、日本代表
主な職場···札幌のオフィス、体育館
座右の銘···為せば成る
職務内容
●スポンサー獲得のための積極的な営業
●体育館確保のための行政との交渉
●選手として全力でプレー
日本バスケットボール界に、前代未聞の激務を遂行する人物がいる
レバンガ北海道で「選手」兼「オーナー」を務める43歳の折茂武彦だ
サッカー界でたとえるなら、カズが現役中に横浜FCの会長になるようなもの
“コート内外で闘うオーナー"である
所帯が小さいため、オーナーは多忙だ
スポンサー開拓のために営業マンとして会社を訪ね歩き、懇親会やパーティーに出席するのも仕事のひとつ
その一方で練習では一切の特別扱いはなく、20代の若手に混じって歯を食いしばり、フルメニューをこなしている
「最初は不眠症になって激ヤセしました。でもチームを存続させるために、どれも大切なこと。この生活が当たり前になってきました」
すべての始まりは、2011年1月、前身のクラブ(レラカムイ北海道)が経営難に陥り、運営会社が日本バスケットボールリーグから除名処分を受けたことだった
チーム消滅の危機に、レラカムイ主将の折茂が立ち上がる
自己資金で新クラブを創立したのだ
「オーナーとして最も怖いのが給料日。運転資金が足りなくなるたびに、自分の貯金を取り崩しました。僕は14年間トヨタの実業団でプレーしていて、いい給料をもらっていたんですよ。でも、その貯蓄がなくなった。まあ、妻は『自分で苦労して得たお金なんだから好きに使えば』って許してくれましたが(笑)」
赤字を減らすべく、折茂が選んだのは選手補強費の削減だ
だが、1年目に5位に入ったチームが、2年目は8位に低迷
順位が落ちたことで観客動員も減り、負のスパイラルに陥ってしまった
だから3年目の今季、9月から始まる新リーグ(NBL)に向けて、折茂は博打に出た
「まだスポンサーを十分に確保できるかわからないんですが、先行投資で補強費を増やしました。ここからはいかにスポンサーを集め、観客数を増やせるか。その戦いになります」
それにしても、悪戦苦闘しているとはいえ、どうして折茂は新米オーナーながらにクラブを存続させることができているのだろう?
ひとつ役立っているのはトヨタ時代の経験だ
「トヨタでは副社長に直訴して、裏で強化のような仕事もしていたんです。クラブハウスを作ってもらったり、他のチームや大学の選手に『うちに来いよ』と誘ってスカウトしたり。本気で勝ちたかったのでね。で、9年かけて優勝を実現した。実業団でチーム改革に挑んだ経験が生きていると思います」
現在、レバンガの予算は1億円規模で、これは実業団を母体とするチームの約半分に過ぎない
このギャップはいつか埋められると折茂は信じている
「札幌の人口は約190万人です。昨年は地元開催で3200人入った試合もあった。行政の協力を得て、毎回いい会場を使うことができれば十分勝算があると思っています」
9月、生き残りをかけた戦いがまた始まる
この仕事に就くには······
野球とサッカーを除けば日本のクラブ経営は未だ発展途上
金銭的にはマイナスになる可能性も高いが、飛び込めばチャンスがある
(抜粋)
生まれ変わったレバンガ
期待しましょう
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