Pre-IBDPの夏休み、9月までに本当にやるべきこと
日本で4月入学のIB校に通い、いま夏休み——あるいは海外のインターナショナルスクールで、9月からいよいよIBDPの1年生になる——そんなあなたへ。
この夏は、間違いなくIBDPという新しい世界に入る前の「最後の準備期間」です。でも、ここで一つ大きな誤解を解いておきます。
「DP1の教科書を先取りして勉強する」のは、ほぼ無意味です。
なぜならIBDPは、知識の「先取り」よりも「考え方の切り替え」が勝負だからです。この夏にやるべきは、科目の内容ではなく、IBDPで求められる「頭の使い方」と「生活のリズム」を自分のものにすること。これができているかどうかで、9月からの3か月間のストレスがまったく変わります。
1. まず理解しよう:IBDPは「試験」ではなく「作品」を課すシステム
IGCSEやMYP、あるいは日本の中学までと決定的に違うのは、IBDPが「その場で正解を出す力」より「時間をかけて問いを深める力」を評価する点です。
どの科目にも内部評価(IA)があり、数か月かけて自分でテーマを決め、調査し、論文を書く。
EE(課題論文)は4000語の独自研究。
TOK(知識理論)では、自分が「知っている」と思っていることの前提を問い直す。
これらはすべて、「与えられた問題を解く」のではなく「自分で問題を設定する」作業です。そしてそのためには、読解力・要約力・論理的構成力・情報取捨選択力が欠かせません。
この夏、まずは「自分で考える」練習を、小さな単位で始めてください。
2. 具体的にやるべきこと——「やらないこと」も含めて
(1) 毎日30分の「多読」——ただし読み方は決める
おすすめは、1日1本の長めの新聞記事(The Guardian, The New York Times, 朝日新聞Globalなど)か、ノンフィクションの本(人文・科学・社会問題)を20〜30ページ読むこと。
大事なのは「読んだら終わり」にしないこと。
読んだ後、以下の3点を必ず自分の言葉でノートに書く:
筆者の主張は何か(1文で)
その主張を支える証拠・例は何か(2〜3個)
自分はそれに同意するか、反論があるか(理由付きで)
この習慣は、TOKのエッセイや各科目の論述で直接生きてきます。実例として、シンガポールの某IB校では、Pre-IBの夏にこの「3点要約」を毎日提出させる宿題を出しており、DP1の最初のエッセイで平均点が例年よりも高まるというデータがあるそうです(同校の教員発表による)。
(2) 「時間割」を自分で作る練習
IBDP最大の敵はタスクの山積みです。夏のうちに、「自分で1日の計画を立て、それを守る」という単純な習慣を身につけてください。
ただし、ここで失敗しやすいのが「朝6時から夜10時までびっしり」という非現実的な計画。むしろ、勉強時間は1日トータル3〜4時間に設定し、その中で「何を・いつ・どの順番でやるか」を前日に決める。これを3週間続けると、9月の授業と課題が重なったときにパニックになりにくくなります。
オーストラリアのIB卒業生の体験談では、彼女は夏の間「毎朝9時から10時は数学の問題を1問だけ深掘りする」と決め、残りは読書とCASのアイデア出しに充てたそうです。結果、DP1の最初の数学テストはあまり良くなかったものの、「計画を実行する自己効力感」が身についたため、その後巻き返せたと語っています。
(3) 「興味の種」を3つ、育てておく
IBDPでは、IAやEEで自分の興味をテーマにすることが許されます(いや、むしろ求められます)。しかし、9月になってから「何をテーマにしよう」と考え始めると、時間が足りません。
この夏にやってほしいのは、自分が「なぜ?」と思うことを3つ、メモ帳に書き出し、それぞれについてインターネットや図書館で1時間ずつ調べること。
例えば:
「なぜ都市部の熱中症対策は緑地より反射材が効果的と言われるのか」
「フェアトレード製品の価格設定は生産者に本当にメリットがあるのか」
「日本の妖怪とヨーロッパの妖精の物語構造の違いは何か」
これらはあくまで例です。大事なのは、「自分が本気で調べてみたい」と思えるかどうか。この種は、EEやTOKのプレゼン、あるいは各科目のIAに自然とつながります。スイスのジュネーブにあるIB校では、Pre-IBの夏にこうした「好奇心リスト」を担任に提出する習慣があり、それが後のEEテーマ決定のベースになっていると聞きます。
(4) 英語(または使用言語)の「アカデミック表現」に触れる
IBDPのすべての科目(言語A以外)で、エッセイやレポートを書く際に求められるのは、カジュアルな会話英語(またはその言語)ではなく、アカデミック・ライティングです。
夏の間に、以下のような表現を「見て」「書き写して」「使ってみる」ことをおすすめします:
主張を導入する表現(“This essay argues that…” “It is widely accepted that…”)
反論を提示する表現(“However, this view overlooks…”)
データを示す表現(“According to X, …” “Evidence suggests that…”)
やり方としては、読んだ記事の中で「これは使える」と思った表現を専用ノートに書き溜めるだけ。1日3フレーズで十分です。9月までに100フレーズ貯まれば、最初のエッセイで「何を書けばいいかわからない」状態は避けられます。
3. やってはいけないこと——時間を浪費する落とし穴
DP1の教科書を最初から最後まで読もうとすること → 内容が頭に残らず、モチベーションだけ下がります。
過去問を解くこと → まだ知識がない状態で過去問をやっても、ただの暗号解読です。秋以降に取っておきましょう。
CASの「実績」を急いで作りすぎること → 夏にやるCASは「アイデアを楽しむ」段階で十分。公式の時間数カウントはDP開始後でOKです。
ただし、ボランティア活動や自主的な研究など、今まで行っている場合は引き続き。ボランティアをやってみようと考えて、行動できるなら今すぐに。
4. 世界のIB生は夏に何をしているか——実例から
英国の某ボーディングスクールの卒業生は、夏の間「毎週1本、自分で選んだテーマで600字のオピニオンエッセイを書き、それをオンラインのフォーラムに投稿する」ことを続けていました。彼はそれがTOKのプレゼンで「自分の立場を言語化する練習」になったと振り返っています。
香港のインターナショナルスクールでは、Pre-IBの夏に「家族や地域の高齢者にインタビューし、その記録を文字起こしする」というプロジェクトが任意で推奨されています。これは歴史や社会系のIAの素地になるだけでなく、自分と異なる世代の価値観を聞き出すスキルが身につくそうです。
アメリカ東海岸のIB校では、夏休み中に「1冊の小説を読み、その中の登場人物の意思決定をTOKの知識フレームワーク(共有知識・個人知識)で分析する」という課題が配られることがあります。これをやった生徒は、DP1の「言語A」の試験で高得点を取りやすいというデータが校内であると言われています。
どの実例にも共通するのは、「机に向かって暗記する」ではなく、「外の世界と自分の思考をつなぐ」という視点です。
↓国際バカロレアに関する特別な記事はこちらから。noteです。
5. 最後に——あなただけの「夏のルーティン」を決めてほしい
この記事で提案したことは、すべてをやる必要はありません。むしろ、自分に合った2〜3個を選び、毎日コツコツ続けることのほうが価値があります。
例えば:
朝:30分の多読+3点要約
午前中:1時間の興味調査(自分が「なぜ?」と思ったテーマ)
午後:アカデミック表現の書き写し(15分)
夜:翌日の時間割を5分で書く
これを8月いっぱい続けるだけで、9月の教室に座ったときの「心の準備」がまったく違います。周りが「IBDP、難しそう」と戸惑っている横で、あなたは「あ、これ、夏に練習したやつだ」と思える瞬間が必ず訪れます。



