2浪、3浪は異常。というのが世界的な認識なのでは?(その2)


コミュニティカレッジ:第一志望に合格できなくても、まず2年制のコミュニティカレッジに進学し、そこで良い成績を取れば、4年制大学の3年次に編入する道が一般的です。学費を抑えられるというメリットもあります。そもそもこのルートからの方が良い大学に入学できる可能性が高いとも言われます。それももちろん勉強次第ですね。

「浪人」の概念の希薄さ:様々なバックグラウンドの人が集まるアメリカでは、年齢を気にせず何度でも挑戦するのは自然なこと。そもそも「1年間の空白」という概念自体が希薄です。小中高において、希望して留年や学年を下げる調整をすることもあり、自由度が高いです。

中国:「复读」という社会現象

 

中国では「复读(フードゥ)」と呼ばれ、日本と同様に浪人生活の後、大学入試(高考)に再挑戦する文化があります。

その規模:中国の高考は年に一度の一大イベントで、専用の予備校が存在するなど、一大産業にもなっています。かなり複雑な事情がありますから詳細は省きますが、およそ2割が浪人生です。

過熱化:中には「清华夢(清華大学合格)」 のために16回も高考を受け続ける人物が話題になるなど、その執念は日本の比ではありません。皮肉なことですが、現在の国内不況のため、その大学を出ても就職できないと言われています。

韓国:「浪人」と「半浪」の巨大マーケット


韓国でも「浪人」は非常に一般的で、日本以上に社会現象と言えるレベルです。

 

圧倒的な数字:2025年には浪人生が20万人を超え、21年ぶりの最多を記録しました。

「半浪」の増加:特筆すべきは「半浪(在学中に再受験する人)」の増加です。2027年度には10万人に迫る見通しで、ソウル大などトップ大学の中退者は過去最多を記録しています。これは「上位大学や医学部への進学が最終目標ではなく通過点」という風潮を反映しています。

逆風も:ただし、あまりに過熱するため、2028年度入試からは主要大学が浪人生の出願を制限する動きも出ています。

香港、シンガポール、ベトナム、タイの状況を見ていきましょう。

香港:「DSEリテイク」という選択肢
 

香港では、大学入試はHKDSEという統一試験で評価されます。この試験は非常に競争が激しく、香港大学(HKU)や香港中文大学(CUHK)などのトップ校かつ医学科への入学はその試験結果がトップクラスの400名程度が入学できます。インター校も多い香港の場合、その試験を利用しない枠組みでの入学が約200名あることも明記しておきます。

香港の特徴は、部分的な再受験(リテイク)が公式に認められている点です。HKDSEでは、特定の科目だけを再受験し、最も良い成績を組み合わせて大学に出願することが可能です。これは、不合格だった年に全てをやり直す必要がないという点で、日本の「浪人」とは大きく異なります。また、成績に応じて大学の他の学部に振り分ける制度もあり、とりあえずその大学に入ってからコースについては再度考えるという無駄の少ないルートもあります。
 

「ギャップイヤー」も認識されており、試験結果に満足できなかった場合に、再受験の準備やボランティア活動などに充てる選択肢として語られています。しかし、香港社会の競争的な空気の中で、ギャップイヤーが「自己成長の機会」として広く受け入れられているかというと、必ずしもそうではないようです。海外大学進学組みの為のギャップイヤーとも言えます。

シンガポール:「ギャップイヤー」という主要な戦略
 

シンガポールでは、「浪人」という概念はほぼ存在しません。Aレベル(シンガポール・カンブリッジGCE Aレベル)の結果が期待通りでなかった場合、多くの学生が選択するのは「ギャップイヤー」 です。

このギャップイヤーは単なる「休み」ではなく、非常に戦略的な期間として位置づけられています。学生はこの1年間を以下のように計画的に活用します。

試験の再受験:Aレベルを再度受験し、スコアを向上させる。
実務経験の取得:インターンシップや就労を通じて、実践的なスキルを身につける。
追加コースの履修:自分のプロフィールを強化するための追加の資格やコースを取得する。
ボランティア活動:社会貢献活動を通じて、人間性やリーダーシップをアピールする。

このように、シンガポールでは「不合格による空白の一年」ではなく、「能動的に次のチャンスを掴むための準備期間」 としてギャップイヤーが確立されています。政府や学校もこの制度を支援しており、専用の情報プラットフォームやメンタープログラムも存在します。

 

これは浪人生活の理想形に近いのではないでしょうか?

ベトナム:稀な「浪人」と「ギャップイヤー」の狭間
 

ベトナムでは、「浪人」は非常に稀なケースとされています。多くの学生は、不合格でもその年に合格した大学に進学するか、あるいは就職の道を選びます。

しかし、全く存在しないわけではありません。ベトナムのニュースでは、大学入学試験に3回挑戦した人物や、医学部を目指して再受験を繰り返した人物の特集が組まれることがあります。これらは「特別な決意を持った稀有な例」として報じられる傾向があり、日本でいう「浪人」が一定の社会的認知を得ているのとは対照的です。

「ギャップイヤー」という概念も存在しますが、ベトナムでは大学進学を1年遅らせて再受験することは、「リスクの高い決断」 と見なされることもあります。一方で、医学部と経済学部の両方を卒業した人物が「2年間のギャップイヤー」を振り返るなど、多様な生き方を示す事例も出てきています。

 

現在ではインターナショナルスクール人気が過熱気味で、今後は大きな変化がありそうです。

タイ:「デークシウ( Dek Siw)」という浪人文化
 

タイには、「デークシウ( Dek Siw)」 と呼ばれる、大学受験のために再挑戦する学生を指す固有の言葉が存在します。

タイの大学入試は複数の試験(GAT-PAT、O-Netなど)で構成されており、日本と同様に特定の大学を目指して再挑戦する文化があります。つまり、タイには「浪人」に近い概念が存在し、一定の社会的認知を得ていると言えるでしょう。

ただし、タイ社会には「同年齢の仲間と同じ進路をたどる」という同調圧力が強く、ギャップイヤーを取ったり、大学入学を遅らせたりする学生はまだ少数派です。「ギャップイヤー」という言葉自体は知られていますが、それが広く一般的な選択肢として定着しているわけではないようです。

「ギャップイヤー」:浪人とは決定的に違う選択

ここで絶対に混同してはいけないのが、欧米で一般的な「ギャップイヤー(Gap Year)」 です。

意味:大学進学を1年遅らせ、その期間を旅行、ボランティア、インターンシップなどに使うことです。

最大の違いは「目的」と「心理的安全性」

 

引き続きこの話しは日本の医学部医学科の浪人に関して続いていきます。