前回の続きです。玉川学園のIBコースに関しての話し。

 

学校を選択する場合何が重要なのでしょうか。

 

玉川学園は長い歴史と伝統を持ち、IBDPプログラムとしての安定感も備えていることがお分かりいただけたかと思います。


しかし、多くの保護者の方から必ず寄せられるのが、「偏差値的な伸びが感じられないのはなぜか」 という追加の質問です。

ここでの「偏差値的な伸び」とは、IBDPの平均点や高得点の推移を指します。高得点は年に1人出るか出ないかの特別な生徒が叩き出すものなので、ここでは平均点に注目してみましょう。

玉川学園は公式にIBDPの平均点を発表していませんが、複数の関係者から例年おおよそ33点前後で推移していると言われています。そして、この数値は数年単位で見ても、大きな変化があるとは言えません。

では、なぜこのような状況が生まれるのでしょうか?

すでに述べたように、IBDPコースで熾烈な選抜を行わない場合、この水準はごく自然な得点と言えます。また、中等部の一般的なコースの偏差値と比べたとき、IBコースが足を引っ張られている側面も否定できないでしょう。

 

日本の学校は、IBコースがあっても、一般コースがある場合はその偏差値に引っ張られていきます。つまり、生徒の募集に影響されるからです。地方の学校と、都心の学校では事情が大きく異なりますが、それでも影響を受けてしまいます。

IBDPで高い得点を出す生徒の傾向は、大きく分けて2つのタイプに分類できます。

天才型:塾などに通わずとも、どんどん結果を出していくタイプ。しかし、このような生徒はごく稀です。

塾対策型:オンラインなどを活用したIBDP対策塾に通い、その結果として平均以上の得点を獲得するタイプ。

学校側の対策が不十分なのでは?と感じられる方も多いかもしれません。しかし、IBDPコースにおいて成績対策で学校ができることにはどうしても限界があります。詰め込みを強制しすぎない前提で、それでも成績に影響してくることで学校がより効率的に推し進めるべきことは課外活動機会の充実です。これが最も重要な大学受験対策でもあります。

 

 

学校ができること「英語力の強化」 と 「各種課外活動の機会創出」

まず、英語力の強化についてです。英語で行うIB(いわゆる英語IB)において、IBDPの授業についていくには英検準1級相当の英語力がほぼ必須と言えます。英検2級レベルでは、日々の授業を理解するだけで精一杯で、結果として最終的なIB得点に悪影響が出てしまうのが現実です。

実際、日本の英語IB校では、入学時に英検2級程度の生徒を約1年かけて準1級レベルに引き上げながら、同時に英語で各教科の内容を学び、成績を向上させるという、非常にハードな工程をこなしています。この「英語と教科の二重の負荷」こそが、IBDPが難しいと言われる最大の理由の一つです。

 

一方、日本語で教科を学べるIB(日本語IB) の場合、最終的に求められる英語力の目標は英語IBとほぼ変わりません。しかし、教科の学習を日本語で行えるという点が大きなアドバンテージです。

つまり、日本語IBでは、教科そのものの学習において言語の壁がほとんどないため、英語IBと比べて以下のような時間的・精神的な余裕が生まれます。

浮いた時間を英語力のさらなる強化に充てられる
一般入試対策に時間を割ける
自分の興味を深める自主学習に集中できる

このように、スタート時点で英語のハンデを背負わなくて済むようにしたのが、日本語IBコースという選択肢です。また、教師の確保の面でも、日本語IBは英語IBよりも有利に働くという現実的なメリットもあります。

しかし、そしてここで問われるのは、そこまでしてIBDPコースのスコアを高くすることに、教育的な意味や意義があるのかという本質的な問いです。この問いへの答えは、学校としての理念・考え方・教育目標に直結します。IB教師不足の苦肉の策とも言える日本語IBですが、その得点がそのまま世界中の大学受験に利用できる点から、最近では日本語IBで良いのではないかともいわれます。

その点、玉川学園高等部のIBDPコースは、この難しさの中で「普通にうまくやっている」 と評価されるべき学校です。無理にスコアを追い求めるのではなく、生徒の成長を多面的に見守る姿勢は、学業至上主義を前面に押し出すIB一貫校とは一線を画すものと言えるでしょう。

 

次に、各種課外活動の機会創出についてです。これは具体的には、ボランティア活動やサイエンスコンペティションへの参加など、多様な課外活動の提案・募集・実行体制を整えることを指します。

これらの活動は、IBの最終得点に直接与える影響は1〜2点程度にとどまることが多いですが、大学受験においては非常に重要なアピールポイントとなります。

ただし、ここにも落とし穴があります。特に進学志向の強いIB校の場合、サイエンスコンペティションや学外コンテストでの実績が過度に重視されるあまり、生徒への精神的負担が大きくなりすぎることがあります。また、本来の興味や好奇心を伸ばすという教育の本質から、やや偏った教育になりがちなのも事実です。

ここに、すべての進学校が直面する大きなジレンマがあります。

高得点と進学実績だけを重視すると、本来の教育の幅や校風が損なわれるリスクがある。しかし、進学実績は生徒集めにとって極めて重要な要素でもある。

このジレンマはどの学校にも共通するものですが、玉川学園の場合はIBコースという強い独自性が影響し、進学実績の数値以上に、学園全体としての評価やブランド力が高いという特徴があります。つまり、単なる「合格実績」ではなく、「どのような教育をしているか」 という理念そのものが評価されているのです。

その結果、玉川学園はスコアや合格実績だけに振り回されることなく、自分の軸を保ちながら教育を続けられている。それが、同校の真の強みなのではないでしょうか。

 

平均点程度の得点で、海外の大学に合格できるのか?
 

ここでよくある疑問が、「平均点程度の得点で、海外の大学に合格できるのか?」 ということです。

結論から言えば、十分に合格可能です。特にイギリス、カナダ、オーストラリアの大学は、引き続きIBDP生の合格を出しやすい傾向があります。イギリスの大学は課外活動よりも学業成績を重視するという意見もありますが、実際には課外活動も重要な要素です。他の国の大学受験では課外活動も重要です。その理由は、単に実績を見るだけでなく、「大学で学びたいこと」と「課外活動」が一致しているかが、志望動機の一貫性を判断する上で非常に重要な指標となるからです。

 

 

誰もが名前を知るオックスフォード、ケンブリッジ、または医学部(医学科)、各国の大学の医学部、アメリカのハーバード・MITにおいては、IBDPの合格点が40点以上に設定されていることが知られています。これ以上の得点者の中から、他の要素を比較して合否がでます。また、IBDPの点が40点を超える場合は奨学金が獲得しやすくなります。大学が独自に提供する成績優秀者への奨学金です。

 

世界中の生徒が対象になるものですが、世界中で40点以上を取る生徒が無数にいるなか、さらに、その大学のその学部を希望している生徒は数多くいます。それでもその大学に合格する理由がいくつかありますが、その点は今回は説明をはぶきます。

 

得点だけでみれば、また、他のIB校の実情を見聞きすれば、親として玉川学園を選択するべきかに悩みが生じることもあり得ます。しかし、いったん冷静になりましょう。海外大学へ進学させますか? その場合、どの国のどの大学のどの学部を目標に設定しますか? これがしっかり分かっている場合は、詰め込み式を徹底して高IBDP得点をたたき出せる学校にするべきかもしれません。それには、徹底した中学生から高校1年生までに密度の高い詰め込み教育をし続ける覚悟が子どもにもです。つまり、子どもがある程度の目標を語っている時点で初めてうまくいく道になります。

 

 

では、国内の大学、特に国立大学の理系学部はどうでしょうか?

こちらも合格は可能です。国立大学の募集要項を見ると、多くの場合、IBスコアによる明確な足切りは設定されていません。足切りがなく、得点が低くても受験自体は可能です。医学科には大学によって36点から、38、39、40点とそれぞれ足切り得点が設定されています。学部(学科)によって選択必須科目の指定と、その得点が4(または5)以上であることという、問題なく達成できる程度の条件設定はあります。

しかし、ここで1つ大きな問題点が立ちはだかります。それが「国立併願拒否」 です。
IBDP利用入試では可能なはずの国立併願受験ですが、募集要項上は曖昧な表現で明確に禁止されていなくても、実際には複数の国立大学への出願を高校側が認めてくれないケースが少なくありません。学校側の事情やルールにより、せっかく受験資格があっても、挑戦する機会自体を制限されてしまうのです。これに関して、玉川学園高等部がどのように対応しているかも直接質問されることをお勧めします。

今後、大学側と高校側の両方の制度が変化していくことが期待されますが、それでもIBDPが理系の大学進学において非常に有利であるという点は、今後も変わらないと考えています。IBDPで培われる思考力や探究力は、理系の学問を志す上で、まさに理想的な素養なのですから。

また、年間の得点推移を見ても明らかなように、玉川学園は決して詰め込み教育で高得点を追い求める学校ではないということがよくわかります。巷でささやかれる「スコア重視ではない」という噂も、このデータが裏付けていると言えるでしょう。

 

 

保護者の立場からすれば、当然ながら「高得点=難関大学・有名学部への合格」という図式を描きたくなるものです。しかし、IBDPの世界では、進路選択の主導権は生徒自身にあるというケースが非常に多く見られます。つまり、卒業後の進路を決める際、親が期待する「偏差値の高い大学」ではなく、「自分が本当に学びたい学部はどこか」 を軸に、生徒が主体的に大学を選ぶのです。これが大学生活の成功の秘訣にもなります。特に、鬱病すら発症しやすいと言われる海外留学環境においては、かなり重要な考え方です


その結果、必ずしも最高得点でなくても、自分の興味や適性に合った学部を優先し、そこで納得のいく学びを深める生徒が、偏差値という指標には表れない、質の高い実績を残している。これこそが、IBDPという教育プログラムであり、玉川学園が大切にしている姿勢のようです。

 

なお、現在首都圏で話題沸騰の国際系高校ですが、英語で学べる点は同じですが、カリキュラムや教育手法はIBDPコースとは全くことなります。実際はIBDPコースも含めて国際系なのですが、IBDPコースとは分けて語られます。

 

IBDPコースと同様に、何の教科を英語で学べるのかが重要です。それによって大学の学部が限定されるからです。

 

また、IBDPコースと合わせて一般受験の対策を行うことは非常に困難です。そもそも、それで一般受験で良い成績が残せる生徒は、IBDPコースにおいても十分な良い成績が残ります。IBDPは採点に多少の疑義が残ることが多く、その対策にもなると言われれいますが、一般受験対策を同時に行う多くの学校では、やはり生徒の疲労感が大きく、課外活動での実績が乏しくなる傾向もあります。日本の大学のIB入試では、課外活動の実績が弱い生徒が多く受験するなか、研究などでの実績の高い生徒はほぼ間違いなく志望校に合格できます。特に理系においては、研究が最重要と言われます。

 

 

結論として、玉川学園のIBコースは良いのか?

 

この続きはまた次回へ。