本の値段、実は「安くなっている」? 教育現場に広がる中古本活用
「最近、子どもの本を買うのに以前よりお金がかかる気がする……」
そんな声を保護者から聞くことが増えました。確かに、書店で手に取る新刊の値札を見て、昔と比べて価格が上がっていると感じます。
文庫本はかつて「500円以下」が当たり前だった時代がありました。現在では700〜900円が標準的で、1000円を超えるものも珍しくありません。単行本も同様で、文芸書のハードカバーは1600〜1800円が当たり前に。ここ10年の上昇幅は、その前の10年間と比較して実に2倍以上に達しています。
この値上がりの背景には、紙やインクのコスト高騰、輸送費の増加、1冊あたりの製造原価の上昇があります。読者が日常的に手に取る「売れ筋」の本も実質的な価格上昇は3割から5割にも。
保護者の皆さんが「高くなった」と感じるのは、決して思い込みではないのです。
中古本市場の拡大が変える「実質負担」
しかし、ここで注目したいのが中古本市場の急成長です。
20年くらい前から書籍はネット通販だけでなく、地域のブックオフなどでも比較的状態の良い本が手頃な価格で手に入るようになりました。特に文芸書は発売から数か月も経てば、定価の半分以下で購入できることも珍しくありません。
実は、新品の価格上昇と中古本の流通拡大を合わせた「1冊あたりの平均購入価格」で見ると、ここ数年はむしろ横ばい、あるいは微減傾向にあるというデータも存在します。
新品ばかりを買っていた従来の読者層が、賢く中古品を活用するようになった結果、家計全体の本代負担はそれほど増えていない、それが実態かもしれません。
また、その中古本流通拡大の反面、新刊本の価格が上がるとうことも言えそうです。
教育現場で広がる「中古本活用」の現実
この流れは、特に子どもたちの読書環境に大きな変化をもたらしています。
学校の授業で扱う課題図書や、夏休みの読書感想文用の本。これまでは「新刊を買うのが当然」という空気がありましたが、今では多くの保護者が積極的に中古本を活用するようになりました。図書館でも課題図書は予約して取り合いになります。
インター校では授業で扱う書籍を保護者間で中古本のリユースとして交換しています。学校のPTAが主導して「卒業生から在校生へ本を譲る会」や、年間数回の書籍持ち寄りバザーを開催するケースもあります。
また、小学生向けの学習ドリルや問題集も、使用時には自宅の印刷コピー機出したものに書き込み、書籍には直接書き込むことをさせない親も多くいます。
生徒たちの「本との向き合い方」が変わっている
この変化は、生徒たち自身の読書習慣にも影響を与えています。
「図書館で借りる」「中古で買う」「電子書籍で読む」選択肢が増えたことで、子どもたちは「所有する」ことよりも「読むこと」自体を重視するようになってきました。「本当に自分に合った本を選ぶ」ことができます。
また、学習に使われる書籍においては、中古本を手に取ることで前の持ち主の書き込みや付箋から「その本の読み方」を学べるという副次的な効果を期待する生徒や保護者も。
特に国際バカロレアで使われる書籍に関しては、生徒により大量の書き込みが行われることがあり、その内容と、今年の授業の内容の両面から解釈や問題に対するアプローチが鍛えられるという声も。
新しい「本との付き合い方」を子どもたちに
出版業界全体では、依然として厳しい状況が続いています。2025年11月の書籍販売金額は前年同月比で減少し、文庫本に至っては前年比5.0%減と大きく落ち込んでいます。
しかし、私たち大人ができることは、「本が高くなって読まなくなった」と嘆くことではありません。中古本の賢い活用法を子どもたちに伝え、予算の範囲内でどう読書体験を豊かにするかを一緒に考えること。新品の本が持つ「真っ新な紙の匂い」や「自分の手で最初のページを開く感動」は、確かに特別なものです。一方で、中古本には「誰かが読んで感じた何か」が染み込んだ、別の魅力があるとも言えます。
読書はデジタルでも紙でも、読めば読んだでその本がもたらす体験を得られます。
子どもには読書を毎日30分。それが目安です。親も一緒に読書時間を持つこともお勧めです。


