チック症が原因のいじめを防ぎたい
「目立たなくする」という新たな選択肢
自分では止められない。だからこそ、つらい。
授業中、まばたきが止まらなくなる。鼻をならしたり、肩やどこか体の一部をを継続的に動かしたり、眉をひそめるようなことを何度もしたり、爪をかじったり。何の前触れもなく首が振れてしまう。
ひどい場合は突然「キャッ!」という声が出てしまう。
チック症は、体の一部を動かしたり、声が出たり、なんども同じことをしないとむずかしく感じる症状です。運動チック(瞬きや首振りなどの体の動き)と音声チック(鼻を鳴らす、奇声など)があり、特に子どもの4~11歳ごろに多く見られます。
チック症の子どもが学校で直面する最大の不安、それが 「いじめ」 です。
チック症状があることでクラスメイトから「変な子」と思われ、からかいやいじめの対象になるケースは少なくありません。鼻を鳴らすチックでは「豚!」と言われたり、チックの真似をされたり、無視されたり。当事者の体験談には、そうした痛ましいエピソードが数多く綴られています。
ある女性は、幼い頃からトゥレット症候群(チック症の一種)に悩まされ、「理解を求めることすら諦めた」と語っています。仲の良い友達に打ち明けても理解が得られず、それ以来誰にも説明しなくなったといいます。
「治す」ではなく「目立たなくさせる」という考え方
チック症は、大学生の年齢になるととともに自然に消えるか、爪をいじる程度の目立たない症状に落ち着くことが多いと言われています。しかし、それは数年先の話。今、学校で毎日を過ごしている子どもたちにとっては、待っている時間すら苦痛です。
私はこの現実を目の当たりにし、こう考えました。
「チックを完全に治すことは難しくても、せめて学校で目立たなくさせることはできないだろうか?」
そうして生まれたのが、今回の著書です。
この本では、チック症そのものを根治しようとするのではなく、日常生活、とりわけ学校という場面で「どうすればチックが目立たなくなるか」 という視点から、具体的な方法を体系的にまとめました。
本書でお伝えしていること
チックを「隠せ」と言っているわけではありません。自分を偽れと言っているのでもありません。
そうではなく、無意識に出てしまう動きや声を、周囲の注目を集めにくい形に変える工夫や、チックが出やすい状況を事前に把握して対策を打つ方法などを、実践的な視点で紹介しています。
たとえば
チックが出そうな予兆を感じたときの対処法
教室の座席をどう選ぶか
授業中にどのタイミングでこっそりと対処するか
周囲にどう説明すれば誤解が減るか
ストレスをためない生活習慣の工夫
これらはすべて、チック症の本人が少しでも楽に学校生活を送れるようにという視点でまとめたものです。
チック症のある子どもは、周囲の理解や環境によって生活のしやすさが大きく変わります。無理にチックを止めようとするのではなく、本人が楽に過ごせる工夫をすることが何より大切なのです。
いじめをなくすのは難しい。でも、減らすことはできる。
いじめそのものを完全になくすことは、残念ながら簡単ではありません。しかし、チックが原因でいじめのターゲットになるリスクを減らすことは、できるはずです。
この本が、チック症で悩む子どもとその家族にとって、少しでも心の支えとなり、実際に役立つ一冊になれば──。そんな願いを込めて執筆しました。
チックは直せなくても、生きづらさは軽くできます。
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治すというのはほとんど無理なことです。コントロールして、目立たなくして、イジメに対象にならないようにする方法です。
あなたやお子さんの毎日が、少しでも楽になりますように。
