海外インター留学の「落とし穴」
理系進学の道が狭まる現実
子どもを海外のインター校に転校させる、1年単位で海外のインター校に留学させる。さらに、順調にいけばそのまま海外のインター校で高校卒業し、日本の大学を受験する、海外の大学を目指す、そんな家庭が増えています。
それは多くの場合、親の意向であり、指示です。
「英語を身につけさせたい」「国際的な教育を受けさせたい」その気持ちはよくわかります。
しかし、ここで一つ、知っておかなければならない厳しい現実があります。
海外のインター校に入学すると、子どもの理系進学の道が大きく狭まる可能性があります。そのことをご存じでしょうか。
なぜ理系進学が難しくなるのか?
その分かれ目は、高校段階のコース選択、科目選択、特にIBDP(国際バカロレア・ディプロマプログラム)のような大学進学準備コースにあります。
IBDPでは、生徒は理系科目(物理学、化学、生物学、数学HLなど)と文系科目から選択して学びます。ここで「理系科目を選択できるかどうか」が、その後の進路を大きく左右します。
ところが、日本から留学でインター校に入学した生徒の場合、英語力の壁が立ちはだかります。
英語力が「成績ポイント不足」を生む
IBDPの理系科目は、高度な専門用語や抽象的な概念を英語で理解し、英語で議論し、英語でレポートを書くことが求められます。読み書きにおいてはネイティブ並みの英語力がなければ、授業においついて行くことすら困難です。
日本のIBDP校とは異なり、海外の一般的なIBDP校では英語力が常識的に不足していないことを求めています。
その結果、多くの日本人留学生は成績不足で、理系科目を選ぶことができません。学校の先生や進路カウンセラーも、生徒の学習力を考慮して、「この生徒には理系は難しい」と判断し、文系科目の選択を勧めるのが一般的です。
つまり、海外インター校に入った時点で、本人の意志や能力とは関係なく、「理系コースへの扉」が閉ざされてしまうケースが非常に多いのです。小学生から入学して、中学1年相当の学年から入学しているのであれば、まだ追いつけることもあるでしょう。
「うちの子は理系が得意だからだいじょうぶ」という思い込み
「子どもは日本で数学や理科が好きだった」「日本にいたときは成績も良かった」そうかもしれません。しかし、大切なのは英語でその教科を学ぶ力です。日本語で理解できることと、英語で思考し表現することは、まったく別の能力です。
実際に、日本の中学で理系が得意だった生徒が、インター校では「理科の授業が理解できない」と挫折する例は数え切れません。結果的に、IBDPでは文系科目ばかりを選び、大学も文系学部・国際系学部を志望せざるを得なくなります。
特に日本の理系・医学系を目指す場合
この問題は、日本の大学の理系学部や医学部医学科を目指す場合に、さらに深刻になります。
日本の医学部や理系学部は、受験科目として数学・理科(物理・化学・生物)の高度な知識を要求します。しかし、海外インター校で文系科目しか履修していなければ、そもそも受験資格すら満たせないか、満たせても圧倒的な不利を抱えることになります。
「海外で英語を学ばせようと思ったら、いつの間にか理系進学の道が消えていた」
これは決して他人事ではありません。
親として知っておくべきこと
海外インター校への留学・転校は、素晴らしい経験をもたらす一方で、進路の選択肢を大きく制限する可能性があるという事実。
特に、お子さんが理系や医学系に興味を持っている、親として子どもには医学部医学科を受験させる方針なら、高校1年相当の学年段階で理系科目を選択できるだけの英語力を身につけられるかどうかは、極めて重要な判断基準です。高校1年相当の学年とは、高校卒業から逆算して3年前のことです。この学年ではPre-IBDPや、AP、Aレベル科目選択となり、この時点で科目選択を行います。つまり、高校1年相当の学年において、英語力があきらかに不足している場合は、かなり困難な道が待っています。
日本国内の一条校IBDP校、公立IBDP校では高校入学時点に英検2級レベルが必須、できればそれ以上と言われます。私立IBDP校の場合は英検準1級を求めています。それは高校入学後から即座に英語の勉強をかなり教科し、1年後には科目としてのEnglishや他の科目を英語で十分に学べる段階にもっていく前提です。海外のインター校とは別です。
インター校によっては、入学後に行われるプレースメントテストの結果で、最初から理系コースを除外される場合もあります。「後から頑張れば取り返せる」というほど、システムは柔軟ではありませんし、各選択科目には定員があります。成績の良い順番や、学校とのコネクション、学校への寄付金によってその定員が埋まっていきます。つまり、選択希望すればどの生徒でも好きな科目を選択できるわけではありません。
同時に、選択できる科目と他の科目の授業時間が重なる場合、どちらかの科目を変更する必要があることも。
つまり、希望する科目を全て選択できる保証はありません。その科目の組みあわせは、学校主導である程度設定されているため、「理系科目(化学)が日本の大学受験に必要だ」と言っても、他の科目の関係で選択できない可能性があります。
覚悟と計画が必要
決して「海外インター校は困難」と言いたいわけではありません。しかし、親の期待だけで安易に留学を決断すると、子どもが後々「選択肢がなかった」と悔やむ結果になりかねません。
もしお子さんが将来、理系や医学系を目指す可能性があるなら、以下のポイントを必ず確認してください。
そのインター校のIBDPなど高校相当の学年におけるカリキュラムで、理系科目を選択するための条件(英語力・成績基準)は何か
入学後、理系科目を取るために必要なサポート(補習英語・個別指導など)を受けられるか
万が一文系コースになった場合でも、日本の理系大学受験が可能な別ルート(帰国子女特別入試の有無など)があるか
「英語が話せるようになること」と「理系科目を英語で学べること」は全く別の次元です。
どうか、この現実をしっかり理解した上で、お子さんの未来の選択肢を狭めない進路選びをしてあげてください。


