一般の書籍と教科書では、価格の決まり方やその動向に大きな違いがあります。小・中学校で配布される教科書の価格は、一般的な新書や文庫のように市場任せにはならず、国が厳しく管理しています。
教科書価格の特徴と仕組み
価格は国が管理
文部科学省が告示する「定価認可基準」に基づき、教科書の種類や学年ごとに最高額(上限価格)を設定しています。各教科書会社は、この上限を超えない範囲で価格を申請し、文部科学大臣が認可します。そのため、同一年度・同一科目の教科書は、発行会社が異なっても価格がほとんど同じか、完全に統一されているケースが少なくありません。
小・中学校の教科書は「無償」
日本では、義務教育である小・中学校の教科書は、国が各学校を通じて児童・生徒に無償で配布しています。その背景には、以下のような特徴があります:
市販書籍より安価:1冊あたりの平均定価は、2024年度(令和6年度)で小学校用が443円、中学校用が571円と、一般的な参考書(1,000円以上が珍しくない)に比べて非常に抑えられています。
国が全額負担:紙の教科書の無償配布にかかる国の予算は、2025年度で472億円に上ります。
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値上がりの圧力と現状
一般の書籍と同様、教科書も紙代や印刷、物流などの製造コストの高騰に直面しており、教科書会社は厳しい経営環境に置かれています。実際、教科書の消費者物価指数は上昇傾向にあり、2025年11月の指数は、2020年を100とした場合112.5と、5年で約12.5%上昇しています。教科書協会は、こうしたコスト増を反映して、国に対して定価の上限引き上げを要請しています。
販売価格:平均443円~571円
保護者負担額:無償配布(海外にいても無償配布を受け取りできます)
価格変動:厳格に管理、緩やかな上昇
今後の課題:デジタル化によるコスト増と品質維持
大きな課題は「デジタル教科書」の普及です。動画・音声などの制作費や配信システムの維持費が新たに発生します。教科書会社からは「コストを価格に転嫁できなければ、教科書発行が立ちゆかなくなる」との懸念も出ており、デジタル化の進展が将来の教科書価格や品質にどのような影響を与えるかが注目されています。
教科書の値段は、一般書のように消費者が直接感じる「値上がり」ではなく、国の認可制度の下で管理され、主に国と業界内で調整されるものです。その背景には「義務教育の機会均等」という原則があります。しかし、高騰する原材料費や、迫るデジタル化の波は、この安定したシステムにも変化の兆しをもたらしていると言えるでしょう。
政府の当初の見通しと異なり、デジタル教科書は政府の財政負担を減らすどころか、膨大な新たなコストを生み出していることが分かってきました。その結果、文科省はこの課題に直面し、導入のペースを調整しています。
※翌日の記事に続く※
