子どもの洋楽、心配ですか?サブリナ・カーペンターから考える、音楽・英語・性教育の向き合い方
親が気づかないうちに、子どもは世界の音楽を聞いている
「子どもがサブリナ・カーペンターのようなポップ歌手の、大人びたティーンのセクシャルな心を歌う歌を繰り返し聞いている」。インターナショナルスクールに限らず、グローバルな音楽環境に触れる中高生の保護者なら、一度は気になったことがあるかもしれません。親としての心配は自然な感情ですが、実はそれこそが、現代の子育てにおいて大切な「現実を見つめ、対話する」チャンスなのです。
音楽にみるセクシュアリティ:世界共通の表現
確かに、一部の現代ポップスには恋愛や人間関係を率直に表現した歌詞が見られます。ラップに関してはあえてコメントしません。
サブリナ・カーペンターの2025年のヒット曲「Manchild」は、未熟な恋人への皮肉をユーモラスに歌った内容ですが、「Fuck my life」といった強い言葉も使われています。あるいは、スカパンクバンドのSublimeの「Caress Me Down」のように間接的な性的表現を含む楽曲もあります。探せばいくらでもあり、もっと過激な言葉はいくらでもでてきます。
しかし、重要な視点は二つあります。
第一に、これは洋楽に限った話ではないこと。日本のJ-POPをはじめ、世界各国のポピュラー音楽を探せば、同様に恋愛や性を直接表現する歌詞は普通に存在します。
第二に、これらの表現は、多くの場合、十代の若者が現実に感じ始める複雑な感情―恋愛、失望、自立、性への目覚め―を反映した文化的な産物でもあるのです。
「聞く」と「理解する」の間にある、長い時間
親が過度に心配する必要がない理由の一つは、「歌詞を聞くこと」と「その社会的・性的な含意を完全に理解すること」の間には、大きな隔たりがあるからです。
特に外国語の歌の場合、最初はキャッチーなメロディーやリズム、繰り返されるフレーズ(時には「La」や「Yeah」といった意味の薄いフィラーでさえ)に引かれていることがほとんどです。歌詞の意味、特に比喩やスラング、文化的文脈を深く理解するには、語学力だけではなく人生経験も必要で、それは長い時間をかけて培われるものです。子どもが今表面的に口ずさんでいる歌も、その真の意味に気づくのはずっと後のかもしれません。
もちろん、直接的な性表現の歌詞に関しては、大きな声で歌うべきではないでしょう。
禁止より教育:音楽を性教育の「入り口」に
では、親としてどう向き合えばよいのでしょうか。鍵は「取り締まり」ではなく「対話」と「教育」 です。
気になる歌が流れてきた時、それを頭ごなしに禁止するのではなく、「この歌、どういう意味だと思う?」「この歌手は何を伝えたいんだろう?」と会話のきっかけにしてみてください。
性的な表現であれば、そのことを伝え、人前で歌うことのには注意が必要だということを説明しましょう。
そこから、人間関係の在り方、同意の重要性、メディア・リテラシーなど、包括的な性教育の話題に自然と発展させることができます。音楽は、硬くなりがちなこれらの大切な話題を、身近でリアルな素材として提供してくれるのです。
見逃せない、歌がもたらす言語学習の利点
音楽を通じた英語接触には、大きな教育的メリットもあります。言語学習の観点からは、歌を「聞く(リスニング)」ことと「声に出す(シャドーイングや歌唱)」ことは、以下の能力を育みます。
自然な発音とリズムの習得:教科書では学べない、生きた言葉の流れやイントネーションに触れられます。
語彙と表現の拡張:感情や状況を表す豊かな表現を、文脈とともに記憶に定着させやすいです。
学習の「楽しさ」と「持続」:好きなアーティストや曲という強い動機付けは、言語学習を続ける最も強力な燃料の一つです。
「英語の歌で学べるのは変則的な表現ばかり」という指摘もありますが、大切なのはバランス。学校で学ぶ標準的な英語と、音楽や映画で触れるくだけた表現の両方を知ることが、結果的に言葉に対する深い理解と柔軟性を育てることにつながります。
柔軟な視点で、子どもの世界と対話する
インターナショナルな環境で育つ子どもは、文字通り「世界」の文化を浴びて成長します。サブリナ・カーペンターのようなグローバルなポップスターは、その一端に過ぎません。
完全に管理・遮断しようとするより、親自身が少し距離を置いて「そういう文化もあるんだ」と受け止め、子どもが何に興味を持ち、どう感じているかに耳を傾ける。その上で、家族の価値観を伝え、必要な知識を提供する。この柔軟でオープンな姿勢が、思春期の子どもとの信頼関係を築き、彼らがメディアや情報を批判的に捉える力を養う土台になるのです。
音楽は時に挑発的ですが、それは若者が直面する複雑な世界の反映でもあります。その「音」を消すのではなく、その「声」に耳を澄ませることから、より深い子育ての一歩が始まります。