インターナショナルスクールと義務教育の葛藤|是認と反発の狭間で
グローバル人気と法律の狭間で揺れる子どもたちの教育

人気急騰するインターナショナルスクールの現実
インターナショナルスクールが近年、日本で増加の一途をたどっています。プリスクールと呼ばれる英語の幼稚園は国内に500校以上あり、初等部・中等部を持つインターも50校以上に上ります。

 

通常、インターナショナルスクールとは小学校からのことになりますが、現在日本では幼稚園・保育園相当でも、英語環境を提供している場所を「インターナショナルスクール」と呼びます。

かつては外国人の子女のための教育機関という色彩が強かったものの、今では日本人家庭の子どもが多く在籍しています。

この人気の背景には「英語力や国際的な視野を身につけさせたい」という親の願いがあります。日本の有力経営者もインターナショナルスクールに在籍していたことなどがその期待を後押ししています。

 

 

しかし、この流行の陰で、義務教育制度との深刻な矛盾に直面している家庭が少なくありません。

法律上は「就学していない」と見なされる現実
文部科学省はインターナショナルスクールへの就学について、驚くほど明確な立場を示しています。

「学校教育法第1条に定める学校(一条校)への就学が原則であり、インターナショナルスクール等の各種学校に通学している場合、就学義務を履行したことにはなりません」。

つまり法律上、一条校ではないインターナショナルスクールに通う子どもは、「学校に通っていない子」 と同じ扱いなのです。

このため、インターナショナルスクールの小学部を修了しても、日本の義務教育を修了したことにはならず、通常は一条校である公立中学校への入学が認められないという問題が一部で生じています。

 

 

現場で広がる対応のばらつき
この制度と現実のねじれに対し、現場では様々な対応が生まれています。

文科省は「やむを得ない事情」 がある場合に限り、一条校ではないインターナショナルスクールからの編入学を認めるように通達を出しています。しかし、この「やむを得ない事情」の解釈が自治体や学校によってまちまちなのです。

教育委員会や校長には3つの対応が見られます。イエス(認める)とノー(認めない)、そして態度保留。 この対応のばらつきが、さらに問題を複雑にしています。

これは、教育理念のばらつきと同様、しっかりとしたメッセージを発することなく、委員長が責任逃れをしながらその場しのぎの対応をしている各委員会の責任がかなり大きいものとなっています。

一部の自治体では、インターから公立中学校に転校する場合、一旦小学6年生のクラスに在籍することを求めるという驚くべき対応が取られています。中学2年生が数ヶ月間、小学6年生のクラスに在籍するという「罰則のような指導」が行われるのです。

 

 

家族が抱えるジレンマ
この状況下で、インターナショナルスクールに子どもを通わせる家族は大きなジレンマに直面しています。

「日本の学校に馴染めず、インターで生き生きしているのに『未就学』なんて書類上の話でしかない」「制度が現実に追いついていない」「英語教育の未熟さを解決しようとしない」「明確な規定をつくろうとしない」

このような保護者の本音が、現行制度の問題点を浮き彫りにしています。

一方で、インターから日本の学校への編入を検討する家庭も少なくありません。ある調査では、インターナショナルスクールに子どもを通わせたことがある保護者のうち、約65%の子どもが途中で退学しているとのデータがあります。通常は中学・高校受験に対する戦略的退学・転校です。

しかし、理由の一部には学校への不適応(23.5%)や学費(20.0%) があります。

変わり始めた大学受験の環境
一方で、状況を変える動きも出てきています。かつてはインターナショナルスクールの高校卒業生が日本の大学を受験するには大検(現在の高校卒業程度認定試験)が必要でしたが、現在は国際的な評価団体の認定、国際バカロレアIBDP認定を受けたインターなら直接受験できるようになりました。

国際バカロレア資格を取得できるインターも増え、東京大学や京都大学をはじめとする国立大学でもバカロレア入試が導入されています。医学部医学科でも入試枠組みがあります。

 

 

問題の本質はどこにあるのか
この問題の本質は、「どこで学ぶか」よりも「どう学んでいるか」 に目を向けるべきだという点にあるのではないでしょうか。

一条校以外でも、多くの子どもたちが確かに学び、成長しています。 インターで学ぶ子どもたちは、高度な英語力や国際感覚を身につけ、多様性を自然に受け入れる姿勢を養っています。

 

しかし、インターナショナルスクールと呼ばれる学校には、多種多様な学校が存在し、それはあまりニュースになりませんが、教育内容に日本の考えとは大きくことなることが含まれます。つまり、不適切な教育が行われている場合、そこで学ぶことにお墨付きを与えることはできません。

これからの教育の在り方
一条校ではないインターナショナルスクールに通うことが、「義務教育違反」 というレッテル貼りだけで片付けられるべきではないでしょう。

国際教育界隈も「多くの日本のインターナショナルスクールでもしっかりと日本人の教育に貢献しているのに、就学義務の免除の問題で行政の対応にばらつきがある」 と指摘します。

多様な教育の選択肢を認めつつ、子どもたちの学びの機会を保障する。制度と現実のギャップを埋めるための、社会全体での対話が求められています。

私たちは、形式ではなく実質のある教育について、もう一度考え直す時期に来ているのではないでしょうか。

 

それは、インターナショナルスクールをむやみに公認することではなく、インター校のような英語主体の教育を行う公立小中学校があってよいのではないかということにつながります。

 

公立学校の学費を一定にする必要もなく、学校によって、特徴によって柔軟な運営を行えるように変えていくことが時代にそった流れと思われます。