大学入試のジレンマ:疲弊する教授と増加する総合型選抜の現実
選抜の多様化と教員の負担増という、二律背反の課題。

 

こんなテーマですが、生徒にとっては重要です。つまり、親にとっても重要です。

変わりゆく大学入試の風景


大学入試は、「一般入試」 から 「総合型選抜」 へと大きくその姿を変えつつあります。多くの大学で一般入試とそれ以外の選考方式では、ほぼ半数ずつになりました。

 

それ以外とは、総合型、推薦、国際バカロレアなどです。もちろんここに、社会人選抜、私費外国人枠も含まれます。

 

この変化は「多様な学生受け入れ」という理想をもたらす一方で、現場の教授・教員・職員たちに過重な負担を強いているという現実があります。教授たちは面接や審査業務に追われ、本来の使命である教育と研究の時間が削られるというジレンマに直面しているのです。

 

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総合型選抜拡大の背景

大学入試の多様化政策
文部科学省はかつて、大学入試の多様化を推進してきました。総合型選抜(旧AO入試)は、学力試験だけでは測れない学生の適性や能力を多面的に評価することを目的として導入されました。この流れを受けて、多くの大学が総合型選抜の実施を拡大してきました。

学生確保の現実
少子化が進む中、大学は学生確保のために多様な選抜方法を導入せざるを得ません。一般入試のみに依存すると、特定の層しか集まらないリスクがあります。総合型選抜は、早期に入学希望者を確保できる手段としても重視されています。

 

また、入試問題だけを解くことを目的とした高校生活となり、特性・個性の薄い均一な考えの学生が集まることを問題視していたことも重なり、総合型選抜を取り入れる動きは加速しました。

 

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教授たちを襲う「審査疲れ」

一方で、総合型選抜では、書類審査に加えて面接、プレゼンテーション・グループディスカッションなど、通常は2回の人物考査が行わ、対象人数に比例し長時間入試業務に拘束される教授がいます。増大する業務負担が問題になっています。

 

目安で言えば、書類上で9割をしぼっていき、面接などで確認をする。その中から、問題ない生徒を書類審査上の順位で合格させていく。面接などで大きく減点される生徒は、書類上の順位を一番下に下げていき、最終的に上から順番に定員まで合格させる。つまり、書類審査でほとんど合格不合格が決まっています。書類上合格しても、約倍数の書類上合格者がいますから、半数は面接などでしぼりこみますが、結果的に書類上不合格になる場合はその後がないわけですから、書類が最も重要な準備になります。

 

面接の方法も、個人面接からグループ面接までありますが、面接以外の人物考査には多様な選考方法があります。

 

結果的に書類審査から人物考査までの労力は一般入試のマークシート採点よりもはるかに時間を要します。

例えば、1人の学生を2回合計30分面接すると仮定しましょう。100人の受験生がいれば、延べ50時間もの面接時間が必要になります。これに面接会場での前後の時間や、会場設定時間、さらに書類審査や選考会議の時間を加えると、その負担は膨大なものになります。

 

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本来業務との衝突

教授の本分は教育と研究です。入試担当職員は書類上の仕事を行い、選考内容には関知しません。総合型選抜の準備と実施に時間を取られることで、大学教授たちの研究活動の時間が減少しているという声が多く聞かれます。

 

論文執筆や実験、学会活動などが滞り、アカデミックな生産性が低下する恐れもあります。

理想と現実の狭間で
 

多くの大学では、一般入試と総合型選抜の比率をもう少し総合型に傾けたいと考えています。結果的に、総合型で合格した生徒が大学で良い結果を残しているからです。しかし、実際にはそれができません。これ以上総合型選抜を拡大すると、大学側の入試にかける時間が多くなりすぎます。国立大学の場合は、一般入試枠を少なくしすぎると、受験生の機会均等が損なわれるという批判が出ることもあります。女子枠を作ると批判されますが、同様に一般入試枠も縮小が難しいのです。

また、一般入試のみに戻すことで、多様性が失われる可能性もあります。画一的な学生だけが集まることで、大学の特色や教育の質にも影響が出かねません。総合型選抜や国際バカロレア選抜、推薦入試から入学した実績のだせる学生がいなくなることは大学にとっては大きなマイナス要素です。

他大学との競争
 

ある大学だけが総合型選抜を減らすと、受験生が他大学に流れるリスクもあります。学生確保という現実的な課題が、大学の自由度を制限しているのです。少子化の中でいかに学生を確保するかは重要な問題です。

 

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解決策の模索

一部の大学では、外部人材の活用やデジタルツールの導入によって審査業務の効率化を図っています。面接をオンラインで行ったり、書類審査をAIで初期選考したりする試みも始まっています。書類審査を厳密に行い、面接に進ませる生徒数を抑制することが最も重要です。面接でなくては分からない個性の為に、面接の前にビデオ録画プレゼンを提出させる大学もあります。また、全ての受験生に面接を行うのではなく、一次選考、2次選考を別の日に行い、それを通過した者のみに最終面接を実施する方式もありますが、生徒が大学(受験会場)へ拘束される日数が増えてしまいます。

教員負担の可視化と配分


審査業務を配分し、負担を「見える化」する大学も増えています。また、入試業務に対する適切な評価を人事考核に反映させることで、教員のモチベーション維持を図っています。大学としても、入試業務は重要な業務の1つなので、それを給与にからめた評価対象としています。


未来への展望:持続可能な入試制度とは
 

バランスの取れた選抜
今後の大学入試には、多様性の確保と教員負担の軽減の両立が求められます。一般入試と総合型選抜の最適なバランスを見出すことが重要です。

テクノロジーの活用
AIやビッグデータを活用した新たな選抜方法の開発が進めば、教員の負担を軽減しつつ、学生の潜在能力を正確に評価できる可能性があります。入学後の4年間の学生の追跡調査を行うデータを研究することで、どのような書類内容の生徒が学生として結果を残しているかを入試審査に直結させます。

 

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社会的合意の形成
大学入試のあり方は、社会的な合意によって決まります。教員の負担軽減と学生の多様性確保の両立には、大学関係者だけでなく、高校、受験生、保護者を含めた広範な議論が必要です。大学は受験時の提出書類に、推薦状を加え、さらに推薦状を2通にすることや、高校側からの追加データーや指定書式による書類の提出を義務つけたりすることで、大学側の負担を減らす動きが盛んです。

教育の質を守るために


総合型選抜の拡大は、「多様性の確保」という理想を実現する一方で、教授たちの審査疲れという現実を生み出しました。一般入試と総合型選抜の比率を調整したいができないというジレンマは、大学が理想と現実の狭間で苦悩する姿を象徴しています。

持続可能な大学入試制度を構築するためには、教員の負担を軽減しつつ、学生の多様な能力を適切に評価する方法を模索し続ける必要があります。大学入試は学生の未来を決めるだけでなく、大学教育の質や教員の研究環境にも直結する重要な制度です。

私たちは今、大学入試のあるべき姿を、多角的な視点から議論する時期に来ているのではないでしょうか。