国立大学の学習環境改善:24時間利用可能なスペースはなぜないのか
 

学びたい意欲はあるのに、場所がない

それが日本の大学生の現実。

はじめに:大学生の「学びたい」を阻むもの


日本の国立大学には、24時間利用できる図書館や自習スペースがほとんどありません。多くの大学では夜9時頃には閉館し、朝まで学習できる環境が整っていないのが現状です。

一方、アメリカをはじめとする海外の大学では、早朝から深夜まで利用できる自習室や、24時間開いている図書館や自習スペースが珍しくありません。この違いはどこから生まれるのでしょうか。本記事では、日本の国立大学における学習環境の課題と改善策について考えます。

 

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なぜ日本の国立大学に24時間利用できる施設がないのか

管理費・光熱費の問題


国立大学は2004年の法人化以降、運営費交付金が年1%程度のペースで減少し続けています。自民党の政策の一環ですね。これにより大学経営は厳しさを増しており、施設の維持管理費や光熱費を削減せざるを得ない状況です。

24時間施設を開放すると、当然ながら光熱費や設備の維持管理費が大幅に増加します。特に老朽化した建物の多い国立大学では、これらのコスト負担が重くのしかかります。

 

ここで覚えておきたいことは、「老朽化した建物が大学」だということです。現状、これをメンテナンスする予算がありません。つまり、多くの国立大学では老朽化した建物を建て替えたり、耐震補強したり、改築改装する予算が不足しています。

セキュリティ上の課題

大学キャンパスは多くの場所で基本的に開放された空間であり、不特定多数の人の出入りを完全に管理することは容易ではありません。深夜帯に施設を開放するには、警備員の配置や入退館管理システムの導入など、セキュリティ対策が不可欠です。

しかし、こうした対策には多額の費用がかかり、財政難に悩む国立大学では十分な対策が講じられないのが実情です。学生証や入館証のデジタル化は進みましがた、それだけでは安全対策として不十分です。

人員配置の難しさ
 

24時間施設を運営するには、職員の深夜勤務やシフト制の導入が必要ですが、人員配置の面でも課題があります。国立大学では人件費が支出の約60%を占めており、追加の人員を配置する余裕はほとんどありません。

 

 


日本の大学における学習環境の現状

限られた開館時間
 

例えば、浜松医科大学附属図書館の開館時間は、授業期で平日9:00~20:00、土日は10:00~17:00までとなっています。試験前など学習需要が高まる時期でも、夜遅くまで学習できる環境が整っていません。これでは朝勉も不可能ですね。例えば、通学バスの混雑をさけて早朝に大学に到着しても、空調は切れている、座れる席は外のベンチだけ。悪夢です。

学習スペースの多様化
 

一方、大学側も従来の図書館とは別の形で学習環境の整備を進めている動きがあります。神戸大学では、キャンパス内に「ラーニングコモンズ」や「学生ラウンジ」などの多様な学習・休息スペースを設置しています。

岡山大学でも「学修支援スペース」や「リフレッシュスペース」を設け、学生の自主学習をサポートしています。しかし、これらのスペースも深夜まで利用できることは稀です。

進化する大学図書館の役割
 

近年の大学図書館は、単なる図書の貸し出し場所ではなく、学生の自主的な学びを支援する機能が重視されています。千葉大学の「アカデミック・リンク・センター」のように、図書館を核として「空間」「コンテンツ」「人的支援」を有機的に結合した学修支援基盤を構築する大学も現れています。

しかし、これらの先進的な取り組みも、24時間利用可能ではない点では同じ課題を抱えています。

海外の大学との比較
 

海外、特にアメリカの大学では、24時間利用可能な図書館や学習スペースが一般的です。これは、大学が学生の学習環境整備を最優先事項と位置づけ、十分な財政的裏付けがあるからです。

日本の国立大学が同等の環境を整備できない背景には、先に述べたような財政的制約に加え、政府の教育投資の不足が指摘されています。2024年のOECD調査によれば、日本の公的支出の中で教育が占める割合は7.1%と、OECD加盟37カ国中3番目に低い水準です。

 

 


現状を変えるために必要な対策

政府の支援と教育投資の拡大
 

国立大学の財政基盤を強化するためには、運営費交付金の削減傾向に歯止めをかけ、教育環境整備のための特別予算を措置する必要があります。

日本では高等教育に対する公的支出が先進国の中でも特に低く、これが大学の施設整備や学習環境の充実を妨げる主要因となっています。政府は教育を「未来への投資」と位置づけ、高等教育予算の抜本的拡充を図るべきです。


大学の経営努力とリソースの再配分
 

大学側も、経営の効率化を進め、節約したリソースを学生サービスの向上に振り向ける努力が必要です。例えば、一部の国立大学では施設の一部を時限的に24時間開放する実験的取り組みも始まっています。

段階的なアプローチ
 

いきなり全ての施設を24時間開放するのは難しくても、試験期間中のみ夜遅くまで開放する、キャンパス内の一部エリアを24時間学習スペースとして整備するなど、段階的なアプローチが現実的です。

学生の自主的な学習環境の創出
 

大学側の対応を待つだけでなく、学生自身が自主的に学習環境を創り出すことも重要です。例えば、千葉大学のアカデミック・リンク・センターでは、学生が自主的にグループ学習を行えるスペースが設けられています。

 

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おわりに:大学生が学びやすい環境を目指して


日本の国立大学に24時間利用できる学習スペースがない背景には、財政的制約やセキュリティ上の問題など、複合的な要因があります。しかし、大学生が十分な学習環境を確保できないことは、個人の学びの機会を制限するだけでなく、日本の将来の知的財産を損なう危険性もあります。

政府の教育投資の拡大と大学の経営努力、そして学生自身の積極的な関与によって、より良い学習環境を築いていく必要があります。大学生が「学びたい」と思った時に、いつでもアクセスできる学習環境の整備は、社会全体で取り組むべき課題なのです。

私たち一人ひとりがこの問題に関心を持ち、改善を求める声を上げていくことが、現状を変える第一歩となるでしょう。